TDM - トウキョウダンスマガジン

TAMAKI・プロダンサーの可能性
ところで日本はダンサー多い方?
圧倒的に多いですよ。人口から言えば。ここまで流行りになる国なんてないですよ。ダンス自体がTVに出てくることもないし。
踊り好きですよね、日本人。
好きなわりには、認識のしかたがスポーツとちょっと似てるところがあるかなっていう。だから、僕が以前掲示板でよく書いていたのが「アートとして外国みたいに認識した方がよりダンスとして成長して行くんじゃないか」ってことだったんですよ。
自分たちが食っていくためにもそれは絶対そうだと思う。
もともとダンスっていうもの自体、身体の表現じゃないですか。アフリカの踊りであれなんであれ、神様に対する自分たちの意思の表現であって、それが形式上こういう踊りになってきて新しい技が生まれてきて。技が生まれてく毎に今度はそれがだんだん表現じゃなくなっていくんですよ。見せ物=パフォーマンスになってくるんですよ。パフォーマーになってしまうと表現っていうものがそこから離れるから、「ダンサー」というよりは「野球選手」的な要素が強くなっちゃう。エンターティナーっていうのはそういうことですよね。
お笑いのネタを入れるって言うのも…
エンターティナーですよね。ただ、ダンスを表現する、例えば「ノリ」っていう考え方は「フィーリング」の発想ですから、僕がもしフランス人のノリを表現する時は、やっぱりその「フィール=感じる」というのが大事なこと。「フィール」というのが入ってきちゃうともうそっから、アートなんですよね。「感じる」という発想はアートの世界に存在するものだし、逆にいえば、エンターティナーの中では「感じる」ではなくて「驚かす」なんです。
うんうん。
「笑わせる」、「驚かす」っていうのは他の表現なんですよ。
そこが日本はどっちかと言うと「エンターテイメント=ショウ」って言う感じですよね。
うん。「驚かす」の後に何もない。だからアートってすごく極めたもので、職人でもないしエンターティナーでもないんですよ。「ダンサーって何か」って言ったら、驚かせた上に感じさせるから、技術がないと驚かすことも出来ない。だから、職人を経てエンターティナーを経て、感じる事を備えて初めてダンサーになれるんですよ。だから、そこらへんを理解してないとダンサーっていうのを理解できないんじゃないかなと。僕の中では、技術を極めて、人を驚かすことを覚えて、その上に感性を放り込むっていうのがダンサー。だから、ダンサーって実はすごい簡単なようで、すごい難しいことなんですよね、やっていることって。ましてや、ステージで見せるなんていうのはもっと難しいわけで、そういうのもエンターティナーとして勉強していかなきゃいけないんですよね。
それと、別のベクトルで自分の「根っこ」の部分も大事。
そう。「フィーリング」も。音楽に対する表現ですよね。表現するっていうことが関わって、3者全部、職人であり、エンターティナーであり、同時にアーティストであってはじめて、これからのプロダンサーの形になる。それを極めていかないといけなくなる。
なかなかそんなこと考えてる人も居ないですね(笑)。
確かに(笑)。そうなってはじめて完成される、だけどどうしてそういう事を考えるようになったかというと、すごく身近なところでヒップホップをよく理解しているダンサーが実際のステージに上ると葛藤があるからなんですよ。その苦闘を目の当たりにして仕事をしてきた、そういう環境に居たからそういうことがわかる。
フランスではどんな音楽が流行ってる?
フランスでは全般的にクラブとかを考えると、ハウスが圧倒的ですね。
普通の人もふくめて?
そうですね、普通の人も含めて、ヒップホップが来て、ハウスが来てって感じです。

ヒップホップは淘汰されてきましたね、強い人だけ残ってる。第一に技術者であって、その上に独自のノリがあって、さらにみせるエンターテイナーとしての方法も心得てる。ヨーロッパではやっぱりそういう人が残って行くかな。だから意外と外国の方がすごい人が多い気がするっていうのはなぜかっていうと、数あるうちで淘汰されてく。(シーンに)残ってく人達はそれを理解してるっていうのは大きい。日本だと淘汰されないで全員が一緒に見えるから。
日本だとどっちかっていうと長くやったモン勝ちみたいなとこがありますね。
それはある。長くやってても淘汰されない。若いうちだと、上の圧迫で(ダンサーとして)どんなに良くても淘汰されちゃうけど。逆なんですよねヨーロッパって。
それって全体の人口の違いなのかなぁ…
というより厳しいんですよ、アートに対する見方が。流行りがない分、実力がないと厳しい。お客さんが熱狂的にならないから、実力がないと残らない。いいものと悪いものの判断の基準が日本よりも厳しいんですよ。それが結局、「モード」を生み出したんじゃないんですか?フランスの。芸術に対する一般の関心度も他の国より断然強いし。ヒップホップがヨーロッパの中でも特にフランスが中心になるのも、理解力が深いからだと思いますね。
最後に、東京ダンスマガジンを見に来る人達に何かメッセージを。
うーん。自分を表現することを勉強してほしいですね。ダンスで。音楽や踊りを楽しむってことも表現の一つだし、練習で苦しむってことから生まれてくる表現もある。

後は世界を見ることですね。目標を下げた方が楽なのはわかるし、下げるのはどこまでも下げられるけど、上を見なきゃ、いつまでもたどり着けないんですよ。ほんとにうまくなりたいんであれば、誰よりも、一番うまい人を目標にする。僕自身が、ダンスで極めていくっていうことを実感するのは、目標を世界でNo.1って言われてる人達に目標をおくようになってからですね。あそこまで行くんだっていう。

黒人だからうまいとか、白人だからパワーがあるっていうような、そういう固定観念が(日本人を)うまくさせないような気もします。「ヒップホップは黒人の音楽だからお前らには理解できないだろう」って言われて「ああ、そうだね」って言うのは簡単だけど、そういうことじゃないと思う。例えば日本の文化を日本人より理解してる外国人がいっぱいいるのも事実だし。「フィーリング」っていうのはあくまでその人が育ってきた環境で生まれるし、今は歌謡曲なんかもそっちの(ヒップホップとかの)音に近い音になってるわけでしょ。ヒップホップとか黒人の音に近い音を聴いてるわけだから、よりそういう人間が生まれても全然おかしくないわけだし。

後はあれですよね、ダンスをやりたい人はもっと音楽を聴く。音楽を聴くっていうのは、自分の好きになった音楽の原型まで聴く。例えば、音楽を理解するのもダンスを理解するのも同じで、BRIAN GREENっていうダンサーが好きになったら、BRIAN GREENに教えてる人は誰なのかな?っていうところに行く。そうすると、BRIAN GREENっていう人間が見えてくるんですよ。彼だけを見てたらBRIAN GREENっていう人間は見えてこないんですよ。その人を見る前に、その人を育てた人、環境を見る。そうするとそれが見えてくる。音楽も同じで、その音楽の原型になったものって何なんだろうっていう。そういうものを理解すると、必然的にダンスも変わってくる。

もうひとつは仲間ですね。大事なのは仲間。どう付き合って行くのか。一人で黙々と練習するのは大前提として大事。でも一人ではやっていけないのは事実。だから仲間の中に溶け込む努力もしなきゃいけないし人を見る眼も必要になってくる。だから色々やって失敗して痛い目見なきゃだめですよね。痛い目みないでどうにかしようって、そうなると人間成長しないですからね。何にでも言えることですけどね。
'00/10/17 UPDATE
Interview : JIRO(DDF)
Tokyo Jazz in the 7
作曲家、画家、ハウスDJ、一人のハウスダンサーとしてFRANCEに6年プロとしてダンサーの仕事をしてきたTAMAKI氏が主催するREFという団体の国内外アーティスト活動推進イベントサイト。ジャズを基点に全てのアーティストの接点を探しだし今までにないクオリティでコラボレーションを作り出す予定。
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