生み出す瞬間、生む苦しみ、できていく快感を楽しむ。
TDM
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今回の「UMU 凝llection」の内容はどんな感じ? |
KETZ
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完成された作品を紹介しながら、空間ができていくところを見せていくっていうのが“ウムコレ”。終わった時に、「あ、こういうものができたんだ」っていう変化がある。“生み出す瞬間”、“生む苦しみ”、“できていく快感”っていうのを味わったものが作品になるのね。その過程を一緒に楽しめるメンバーと共存していて、その楽しんでいるところを見てください。 |
全員
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うん、その通り。 |
TDM
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今回のWORLD WIDEが短い時間でのオーダーだから、大変じゃないかな? |
KETZ
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まぁ、ライブだよね。一応こんな形を創るっていうリハーサルはするけど、何ができるかわからないっていうのはあるかな。 |
TDM
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いろいろ生み出すケッちゃんだけど、自分の中でどういう時に、“0”のものが“1”に、湧き上がってくるの? |
KETZ
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毎回イメージははっきりしてるんだよね。だから、頭の中だけではどうしようもなくなって、気付いたら創り始めてる (笑) 。気付いたら、なんか切ってるとか、試しに貼り付けてるとか… |
VERONICA
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ホント、そうですよね〜。 |
CHITO
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うん、そこは、早いよね。 |
KETZ
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「あのさ〜…」って言って、イメージをすぐに形にし始められる環境もすごく大事で、だからこの部屋みたいに、手に届くところにすぐ創れる何かがある。ないと、イライラしちゃう。 |
黄帝心仙人
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「気付いたら…生地屋に走り出してるの。」っていうね。 |
全員
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笑。 |
CHITO
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例えば「こんなのいいよね!」って話してて、その5分後くらいには、次の話題にいってるのに、ケッちゃんは「はい、さっきのイメージで、こんなのできた!」って持ってくるんだよね。 |
黄帝心仙人
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ある意味「私、アナログなの。」ってことですかね。 |
KETZ
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アナログ…そうかも。 |
CHITO
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手が早い。 |
KETZ
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手が早い!そう! |
黄帝心仙人
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いい意味なのか悪い意味なのか…。 |
全員
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笑。 |
現実と空想世界との距離感が、空間のバランスになってくる。
TDM
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何かのキーワードに対してビジュアルを描いていく感じかな。じゃあ、前回のWORLD WIDEで登場した「NE時」はどうやって生まれたの? |
CHITO
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まず、“夜の遊園地”っていうコンセプトがあったんだよね。 |
KETZ
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そうそう。一度、“夜の遊園地”っぽい空間を制作したことがあって、もっと自分なりに広げたいなって思って、しばらく自分の中でくすぶってたの。でも、やりたいメンツは頭の中で決まってて、んで、みんなを口説いた。“ネジ”っていうアイデアそのものは、みんなとの会話の中で生まれたんだよね。 |
TDM
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ケッちゃんは作品を創っていく時に、空間も魅了するよね。その具体的な要素ってなんだと思う? |
KETZ
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最近発見したんだけど、空間とのバランスの方程式っていうのがあるの。より空想世界に近いものは高さが必要で、逆に、現実の世界に近いものはフラットな状態でいい。だから、 (月嶋) カリンとの「LOVE」は高さのないフラットな世界観でよかったし、NE時は空想の世界だから、 (前回のディファ有明のように) お客さんよりも高いところのものじゃないとダメなの。現実との距離が、空間の高さと広さに比例する。現実と空想世界との距離感が、自然に空間のバランスになってくるの。 |
TDM
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今、作品をやってみたい場所ってある? |
KETZ
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ホールとか作品をやるために作られた場所じゃなくて、何らかの障害物があったほうが創ってて楽しいかな。形が四角じゃないとか、カウンターのすぐ横に階段があるとかだと、燃える
(笑) 。逆に何もない倉庫とかもいいね。うん、倉庫はやってみたいな。 |
アート作品の価値は後から決まる。
もっと高い意識で、ハングリーになるべき。
TDM
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もし倉庫でやるとしたら、どんな感じで描けそう? |
KETZ
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なんか、規模がどんどんでっかくなっちゃうけど、その空間を全部創りたい。NE時を創った時に、このショーをいろいろな場所でやるというより、ストンプやシルク・ドゥ・ソレイユみたいに、そのためだけの空間でやるっていいなって思った。ストンプやシルク・ドゥ・ソレイユは、その空間にお金をかけてくれるスポンサー、国にも認められている環境がうらやましいかな。 |
黄帝心仙人
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日本にはその文化がない分、そうとう奇抜なことをやんなきゃですしね。 |
KETZ
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奇抜なこともそうだけど、それプラス、単純に、社会的に見てダンサーに対する悪いイメージと、それに対するダンサーの意識の低さが足を引っ張っているような気がする。いわゆるダンサーっていうものに対する世間からの「遊びの延長でしょ。」ってイメージや、単純に時間や約束を守れないとかの素行の部分ね。 |
TDM
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今までにないダンスシーンの在り方として、新たに築いていければとは思うよね。 |
KETZ
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うん、私が生きているうちにできるかどうかわかんないけど…。いや、ほんとに、それくらい長い目で考えてるよ。 |
CHITO
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いや、それは俺らがやんないとダメでしょ。長い目で見て、いつかできるんだったら、俺らの代でもできるよ。 |
KETZ
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そうだね。あと、ダンサーって「プレイヤー=そこによばれたお客様=ゲスト」っ
ていうのが当たり前になりすぎてる気がする。イベントやいろんなケースのステージに出る時に、踊る前にギャラが提示される。そのことに慣れすぎちゃってて、「このパフォーマンスをいくらで買ってくれるのか。」「ほんとにこの金額に値するパフォーマンスなのか」っていう、自分の対価っていうものを考えていないんじゃないかなって。最初に値段が決まっちゃってるけど、実はアート作品って価格は後から決まる、というか…。写真も絵画もそうじゃん。自分の作品を世に出す場合は、それをいくらで買ってくれるのか、っていう風になって、それが本当の値段、その人の価値になるんだと思う。 |
YAB-co
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うん、そうだね。 |
KETZ
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そういう意識で取り組んだら、もっと真剣になるだろうし、簡単にお金は稼げないだろうし、見せる環境、見せたいメディアも変わってくるはず。そして、もっとハングリーになるはず。ダンサーがダンサーの為だけに、ダンスに興味がある人だけに、最高に格好いいショウを見せちゃってる。それがまずもったいなくてね。意識って部分では、単純にレッスンだけを考えても、なんとなく毎月の決まりきったサラリー的な感じになってると思う。でも、教えるっていうことは、“先生”になるっていうことだし、そこに免許や資格がないっていうのも曖昧なこと。もちろん、それに対してすごく真剣に考えてる人もいれば、バイト感覚でやってる人もいる。だけど、お金は決まっちゃってる。教えることに本当に意味のある人もいれば、体力を維持するためだけの人もいる。「なんだか、あの先生のレッスン、先生ばっかり盛り上がって踊ってて、困ります…」っていう生徒の感想とかもあるじゃん。
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黄帝心仙人
&
CHITO |
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…すみません。気付くとついつい…。 |
全員
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笑。 |
KETZ
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それがお金を払ってその時間を買っている生徒のためになってればいいと思うけどね。まぁ、そもそもこんな風に理屈っぽく考え始めたらきりがないね。 |
“奥行き”のあるダンサーになろう!
TDM
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ケッちゃんから見て、魅力的なダンサーってどういう人?具体的に名前を挙げてもらってもいいよ。 |
KETZ
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ん〜、魅力的なのは、やっぱり原田薫さんかな。薫さんは、説得力があって、美しいし、「ただではそれはついてこないでしょ!」って思える肉体美や知識、センス、積み上げてきた重みを感じる。すごく自分と向き合ってる時間があるんだろうなって思える。そういう、“人の奥行き”みたいなものを感じられるところが、魅力的なんじゃないかな。 |
CHITO
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“奥行き”かぁ…。書いとこ! |
VERONICA
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それくらい覚えようよ(笑)。 |
CHITO |
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いやいや、こういうのは書いとかないと忘れるんだって! |
全員
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笑。 |
KETZ
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奥行きのあるダンサーになろう! |
全員
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あ〜いいね〜! |
黄帝心仙人
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今回のテーマはそれでいきましょう。ちゃんとコレ、録音してますか? |
全員
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笑。 |
TDM
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では、今後挑戦したいことは? |
KETZ
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プレイヤーとしていろいろなことを経験してきたからこそわかること、それがあたしの財産だし自分の武器にしたい。踊る人の気持ちや、素材感の光り方・透け方、っていう部分まで計算した衣装作り、空間での生え方っていうのを、いろいろ実験していきたい。そのためには、同じ温度で付き合ってくれるスタッフがすごく大切だってつくづく感じる。それに、同じものを見ているとものすごく話が早い。だから、この前、ラスベガスにCHITO君も誘って一緒に行ったの。シルク・ドゥ・ソレイユの「LOVE」っていうショーを見たんだけど、私たちの中では想定内のものだった。「これなら私たちもできるじゃん!」って。悔しくて、拍手ができなかった。
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黄帝心仙人
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それはどういう悔しさで? |
KETZ
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それをやれてる環境がうらやましかったし、私たち日本のダンスシーンでも、NE時の世界観で見せたクォリティーにも自信がある。その他にも若い世代の素晴らしいパーフォーマーが沢山育ってるなって思うし、同じことを超えることができるはずなのにそれを広げられない、プレーヤーを説得できない、っていう自分の無力さね。あと、やっぱり彼らにはお金もあって、環境も整っている…っていう悔しさ、かな。「あ〜、いい生地使ってるな〜」みたいな…。
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全員
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そこなんだ(笑) 。 |
KETZ
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こっちは100円の生地で済ましてるわけ!あれはメーターいくらだろう!っていう悔しさもあるよ
(笑) 。光り方も理想はあるけど、最近創った「光NE時」のコートの生地、これも100円。ほんとだったらもっと軽くて、丈夫で、通気性があるものにしたいんだけど…とかさ。これは、断熱材か何かの生地。服を作る生地じゃないからね。かなりあったかいよ
(笑) 。 |
TDM
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頑張って一つずつやっていくしかないね。でも、きっとできると思う。では最後に、読者の皆さんにメッセージを! |
KETZ
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ダンスはその人の人間性が出ると思うので、いろいろなことを経験して、“ダンサー”(※すべて一定のアクセント)ではなく、“ダンサー”
(※「ダン」にアクセント)になってほしい。 前者のダンサーは腐るほどいるけど、後者で「私、ダンサーです。」って言える人は、あまりいないんじゃないかな。私は、後者の“ダンサーです”って言える人でいたい。そんな奥行きと、説得力のあるダンサーになってください。 |
TDM
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今日はどうもお邪魔しました。WORLD WIDEを楽しみにしてます! |
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