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アートとダンスの融合「mosaic」公演レポート
しとしと雨降る9/16(Mon)、RAVE2001でMVD(最優秀ダンサー)を獲得した黒田百合が演出する「mosaic」が横浜赤レンガ倉庫一号館にて催された。ストリートという枠では収まらない、舞台をフィールドとしたダンスとアートの融合。写真家である立木義浩や広告アート界から浅葉克己など著名な方々とのコラボレートという新しいダンスの表現がここにあった。
薄暗い光が完全に落ち、いよいよ1部【photocopy】が始まった。会場となる舞台は単なる正方形ではなく、四方に突起した独特の十字形のフロア。その周りには数多くのライト、後方には天上にまで届きそうなスクリーンが設置されていた。

静寂の中、黒田百合の姿がスクリーンに次々と浮かび上がる。舞台袖から黒田百合がすっと表れ、ゆっくりと踊り始める。そして強いピアノ音と同時に、スポットライトが彼女に当たる。光を浴びたその姿はスクリーンの写真の姿と同じ。静寂とスクリーンに写るポーズの連続。繋ぎあわせるダンスの作業は、音、映像はおろか、空気、間合い、その空間すべての要素にぴったりと呼応しており、あらゆる要素が重なるその“瞬間”に思わず魅入ってしまう。
息をつく暇もなく、2部【Contact Lens】が開幕。ダンサーが1人…2人と順番に登場し、民族的なものからスピリチュアルなものまで様々な音楽にのせて4人のダンサーが軽やかに踊る。身体と身体が接触する不思議な空気とスピード感が心地よい。ピタリと揃った全員のピケターンなどは絶妙であり、まさに名画を観賞するような贅沢な瞬間。緊張感、焦り、音へのハメ方などの一つ一つが様々な音楽に伴って展開されるストーリーに思わず見とれてしまう。官能的、かつ美しい旋律にのせた4人のダンサーが繰り広げる、体温36℃のドラマがまさにそこにあった。そして約1時間、休む間もなく最後まで踊りきった彼女達の表情はどこまでも美しかった。
“ダンスショー”と言えば、クラブでのダンスイベントを想像しがちだが、今回の「mosaic」では新しい取り組みと演出を随所に感じとることができたのではないだろうか。そんなステージを創り上げた黒田百合にインタビューを試みてみた。
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