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Interview 〜公演が生まれるまで〜
黒田百合:
青山学院大学在学中にジャズダンスを始め、その後ストリートダンス、クラシックバレエなど興味の趣くままに踊り続け、大学卒業後に単身渡英。ロンドンの様々なダンスカルチャーの吸収に励み、帰国後から自らのダンス創作活動を開始。独自の感性と美意識で、ダンスカンパニー [Si:Dz]をはじめ、ヨサコイソーランなど日本各地の舞踊、メディアなど、あらゆるフィールドで振付、演出を手掛けている。また「美少女戦士セーラームーン」などミュージカル分野のキャスト 、映画「顔」では役者としても活躍。テレビ東京「RAVE2001」4代目グランドチャンピオン、及び振付の分野でMVD〈最優秀ダンサー)も獲得している。今回の作品がソロプロジェクト第一弾となる。
写真:立木 義浩
 ■今回の「mosaic」を始めるにいたる経緯は?
ここ数年、[Si:Dz]として活躍をしてきました。[Si:Dz]って、大学時代にダンスへ没頭した人達が、卒業後も企業に勤めながらアフター5に活動した場所。なにより仲間とのチームワークという色彩が強かったですね。みんなで切磋琢磨し、チームメイト同士、仕事の合間をぬって、練習して、一緒に作品作りをしてきました。その甲斐もあって「RAVE2001」では優勝!公演も年2回ほど実施できたりと、そういった環境下において一定の成果を残し、満足感もありました。しかし、一方では時間的・内容的な制約を感じる時もあり、自然と自分の中で「100%フルに没頭して作品を創ってみたい」という思いが芽生えて来たのだと思います。
 ■立川直樹氏との出会いが「mosaic」実現のきっかけと伺いましたが?
ダンスの世界で、私が当初より興味を抱いていた立川直樹※さんとお会いする機会がありました。で、その時に自分のダンスのイメージを、後に「photocopy的振り付け手法」と呼ぶことになる自分の振り付けの在り方をお話ししてみたのです。すると立川さんから「それをそのまま舞台作品にしてみたらおもしろいんじゃないの!?」というアドバイスをいただきました。その一言がきっかけで実現までこぎつけてしまったのが今回の「mosaic」なんですよ(笑)。
※立川直樹:音楽プロデューサー。コンテンポラリーダンスのシーンにて、「H・Art・Chaos」(エイチ・アール・カオ ス)を世界的な水準まで引き上げ、同カンパニーが2000年にN.YタイムスDance Of The Yearに選ばれるなどの実績を持つプロデューサー。音楽の分野では「伝説のチャンピ オン」「We Will Rock you」などの名曲を生んだQueenを筆頭に、ビートルズ、ピン クフロイド等に関する著作、また「マルサの女」「大病人」等伊丹映画の音楽や、織 田裕二のプロデュースなど、活動は多岐にわたる。
 ■「photocopy的振り付け手法」とは、どのようなものですか?
私、実はレッスンが苦手だったんです。なので、模倣するのは専ら写真やビデオの「一時停止」。でも、「そんなプロセスのポーズとポーズでもつなぎ合わせれば踊りになるのでは?」と考えて、試行錯誤を繰り返してダンス(振り)を形作っていたのです。つまりは、音楽をただひたすら聴き込み、随所に自分が客観的に見たいと思う「絵」としてのポーズをイメージし、パズルのように貼り合わせていく。そんなスタイルで振付をしていることに気づいたのですが、その手法が舞台の第一部のタイトルでもある「photocopy」的振り付けでしょうか。音楽を連続したものとして体で感じ、連続した感性‥いわゆる、ノリで振付けていく人もいると思いますが、私の場合は、瞬間を一瞬で「絵」としてとらえ、そしてその連続としてダンスを創り出してきたのだと思います。
 ■各界の巨匠とコラボレートしたことはどう思いますか?
客観的に見ると、振付の方法論を形にしてみた舞台にいきついたのかもしれません。でもそれは、紛れも無く自分におけるダンス‥まさに写真のような一瞬、一瞬を切り張りしてつなげて連続させていったものなのです。それが「mosaic」を連想させたので、そのままタイトルにしてみました。そして舞台アイデアがまとまり、もともと個人的に交流のあった写真家の立木義浩氏やアートディレクターの浅葉克己氏、服飾デザイナーのARVAGEにお話をしてみたところ、「それはおもしろい!」と賛同を得て、ご協力をいただくことになったのです。コンセプトやシナリオをお伝えした後は、それぞれの方にそれぞれの独自の方法論で「mosaic」を表現していただきました。みなさん、ご自分のフィールドを確立させておられていますので、基本的に各々の感性を尊重してアウトプットをお任せいたしました。その結果、さらに自分を引き出していただけたと感じています。それだけ信頼できるスタッフィングであったということなんでしょうね。各位があげてくださったエレメント(要素)をMixし、それがつなぎ合わされ、連続性をもって、今回の全体の舞台として構成される。ひとつひとつのパーツだけでも一流の作品ですし、それを私のフィルターで組み合わせ、「mosaic」という舞台にまで昇華させることができたのは、とても嬉しいことだと思います。
 ■実際に公演を終えてみていかがでしたか?
今回は、時間もたっぷりと使えましたし、職業として実績のあるプロの方々とのコラ ボレートということで、[Si:Dz]の公演(アマチュア的な結束型製作)とは違い、逆に自分も学び牽引されながら安心して進めることができたと思っています。通常のダンスとは違う、ましてやストリートダンスとも違う、ダンスの方法論をテーマとした、各巨匠の各表現の組み合わせとして生まれた作品‥すなわち「mosaic」であるというおもしろさは充分に満足しています。ただし、そのおかげで「mosaic」を表現するさらなるエレメント‥例えば“音楽”や“空間”への意識が高まり、「mosaic」を構成するパーツを増やしたり、組み替えてみたりすれば、違った表現も可能だろうし、それがさらなる深みにつながるだろうと感じ、時間をかけて育てていけば、より素晴らしい舞台になるのではないかと思いました。そのせいもあり(通常一作品一公演で終了させるものなのですが)「mosaic」については今後も継続して進めていきたいと考えています。今月10/25(Fri)、26(Sat)には東京銀座にて「photocopy」改定版を上演予定なのですが、もうこの時からすでに前回公演中に思いついたアイデア(新しいパーツ)を「Mosaic」していると思いますよ(笑)。

次回予告:
Yuri Kuroda 「photocopy」
〜Dance collaborate with Yoshihiro Tatsuki photography〜
2002.10.25 (Fri)19:00, 26 (Sat)15:00/18:00
(open:20minute before) Ticket:\1,500
at Pepper Gallery

黒田百合 公式サイト
'02/10/21 UPDATE
Editor:TDM staff
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