TDM - トウキョウダンスマガジン

Sound Cream Steppers・彼らのなかに確かな「答え」がある
先ほど月27,000円の部屋に住んでいたとおっしゃってましたが、ダンスを始めて、最初は厳しかったんですか?
H:ああ、みんなバイトしてたし。「Dance Dance Dance」があって、俺たちは全国区になれた。当時もダンスは今と同じぐらい好きだったけど、全然経済的にはついていけなかったね。それでもバイトしながら何とかやってた。
どんなバイトを?
H:役者もやりましたね。役者については今でも夢は捨てていません。

Y:俺はね、ガソリンスタンドとかやった。ホテルのウェーター、あとパン屋さん。それから水道工事。東京出てからすぐは工事の旗振りやってたよ。車も止めてたさ、ロボットダンスで(笑)。結構、ドライバーのリアクションがいいんだよね。
今はダンスで生活出来ます?
Y:楽じゃないけど…。やめた、夢をあたえるために、「余裕でできる」!……ぜいたくしなければね。

H:いろんなモノ望まなければやっていけるよ。海外旅行にしょっちゅう行きたいとか。20代の内にベンツ、ポルシェに乗って年収5千万円欲しいとか。そういうこと考えてる人はダンスオンリーのスタンスはやめた方がいい。
MEGAMIX→trf→S.C.S.と来て、この3人になったというのに何か理由は?
H:合うんだよね。ダンスの趣味とか音の趣味とか。好きなものが似てる。でも何よりも人間的に俺はこの二人が好きだから、トータルで。だから一生付き合っていきたい。

G:何で3人か?言われるまで考えなかったよね。気づいたら、3人だった……みたいな。

H:ダンスグループは何か法律で縛られてる訳ではないし、好きで一緒にいるんだから、いわば同好会みたいなもので、誰にも強制されてないのに勝手に好きで集まってくる。そのまんま深く考えずに10年(!)も一緒にやってきてるのは、どこかが鈍感なのかな(笑)。

Y:常識がどこか外れてる点も一緒(笑)。
S.C.S.でのショータイムまでの過程はどんな感じですか?
Y:リハーサルはいつも2、3回だよね。それまでにそんなに忙しいわけじゃないから、毎週毎週積み立てとく振りがいっぱいあって、それを一気に落とす。そういう作り方だね。

H:衣装も重要だよね。やっぱり踊るときは、オートクチュール(笑)。
オートクチュール?
Y:俺たちはね生地からこだわって作るのよ。

G:ダンス用スーツだ(笑)。

H:俺たちがリクエストで「こういうトコこうしてくれ」と作ってもらってる。
普通のスーツと違うんですか。
Y:うん、形がね。だいぶ違うよ。あと肩がね、上げるときにしわが寄らないように、タイトにしてる。

H:裏打ちとかも違ってて、俺たちのは踊った時きれいに見えるように白くしてある。
どこでつくるんですか?
Y:上野の方にね、そういうことしてくれるおじいちゃんがいるんだ。あとは内緒。企業秘密だからね(笑)。

ダンス歴、年齢・肉体的限界についての考察
Y:実は考えてないんだよー。でも意気込みとしては、足一本なくてもやるつもりではあるよ(笑)。義足でいくよ。

G:うんうん。画家は画家で筆を持つことが出来れば画家でしょ。それと一緒で立てればねぇ?踊れるし。年取ってきたら激しいだけじゃない、渋いグルーブが出せるようになるよ。
スポーツ選手のピークが30歳だとか言いますが、それについてダンスもあてはまると思います?
H:ダンサーのそれは相当上(年齢的に)だと思いますね。LAのブーガルサムとか良い前例がいるじゃないですか。

Y:彼はもう48、9?でも今「New York New York」っていうミュージカルやってる。

H:俺たちもそのぐらいの年、50ぐらいになって、必要とされるように努力し続けたいよ。絶対頑張り続けたい。今現在、実際事故ったわけでも手がなくなったわけでもないじゃん。だからそういう風にマイナスイメージで物事捉えたくないし、肉体がある限り頑張り続けたい。そういうスタンスでいきたいですね。
みなさんのダンス歴とダンスに関する考察なんてあります?
H:ダンサーが力を持って口ばっかりになるとするでしょ。仮にね。そうすると「ダンスで」証明できなくなるのが恐い。俺達はそれよりももっとダンスに純粋でありたいから、年齢とかダンス歴とか関係ない。真剣に思うところある人とは差別なく対等につきあうよ。

G:俺達だってダンスはじめて、15,6年?だから、まあ人生で言えば何?高校生?全然未熟。

H:俺Gotoさんのそういう感覚が凄い好き。15年で未熟って言い切っちゃうGotoさんがすばらしいと思う。

ダンスができることの幸せ
生活や環境が厳しいと思った時、ダンスをやめようと思ったことは?
H:あのね、生活が厳しくてダンスもあきらめたら、完全に一般以下なのよ俺たちは。ほかのことは、あんまりぱっとしなくて、人より少し好きで頑張れるのがダンスだったから。そこでダンスすらあきらめてしまったら……。

Y:人間失格なんだよ(笑)。

H:そうなんだよ、だから苦しい時でも……ダンスはいつでも友達さ(笑)。

Y:俺たちの場合は、ダンスの道すら選択出来ない人達がいっぱいいる中で、たまたま運良くダンスができたんだよ。幸運だと思うね。

G:「食えなくってダンスをあきらめる」ってのは実は変な話だよ。ダンスってのは食うための手段としてやるものではないから。職業としてでなく、誰でもダンスはしたい人がやるべき。きれいごとでなくダンスは誰もが楽しんでいいものだよ。みんなが出来るもの。「ダンサーだからダンスをやる」んじゃなくって、みんなが楽しんでるものが「ダンス」だよ。そういう根底となるものがあって、その中で俺たちは多分運良くプロとしてやってける。

Y:そうそう、助けてくれた人もいっぱいいたし。

H:なんかしら感謝しなくちゃいけないよ。俺たちはプロやってる=運良く「ぜいたく」してるんだから。ダンサーとか、プロダンサーって「ライセンス」が無いよね。音楽と同じように「人=観客」が評価する。お金になるのは、つまり評価してくれる人がたくさんいるってこと。逆にその数が少なくっても「好きさ加減」?強く好きだと言ってくれる人がいることはそれはそれで幸せ。お金にはならないけど(笑)。でもお金には代えられないと思うよ。
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