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KAZUE 〜 my MaKuRo mind. 〜
KAZUE 〜 my MaKuRo mind. 〜
「何事もやってみなくては始まらない。」一世代前に比べてダンスを露出の形が様々になってきた。クラブイベント→ダンス公演というのはその顕著な例だと思う。クラブイベントに出演していたいちダンサーが公演を企画するには、プロデュース能力も必要になるし、本当に大きなエネルギーを要する。“自分の表現したい空間”という理想を描いて飛び込んだ新しい挑戦。その勇気がダンスシーンを、よりオーバーグラウンドへの道を開拓していくだろう。磨かれた感性と研ぎ澄まされた感情表現の詰まった舞台「MaKuRo」の主宰KAZUEの想いを綴ったインタビュー。

KAZUEKAZUE

神神奈川県茅ヶ崎市出身。高校時代はチアリーディング部に所属し、大会での優勝経験も持つ。 ジャズダンサーに転身後はダンスチームCHUPPAのメンバーとして全国で活動。 CHUPPA休止後の2009年に自身のダンスカンパニーMaKuRoを創設、旗揚げ公演では700名を動員。 脚本から演出まで手掛けており、明快で洗練された作風は幅広い層の支持を得ている。 インストラクターとしても都内から全国にレッスンを持ち、後進の育成にも力を注いでいる。

ミスダンスドリルチーム日本大会 チアリーディング部門 優勝(2000)
ダンスコンテスト“ダイアモンドプリンセッサ”にてMVP受賞(2002)
エイベックスa-nation’オープニングアクトダンサー(2004)
田村ゆかり『fancy baby doll』ツアーバックダンサー(2006)
中谷美紀主演 映画『嫌われ松子の一生』にダンサー(2006)
ブランドDeicy ファッションショーオープニングアクト
スーパーチャンプルシークレットゲスト三浦大知 共演(2008,4)
ダンス公演“Vanilla Grotesque”メインキャスト(2008,4・6・12)(2009,5)
渋谷ファースト発表会2部『花の咲かない丘』演出・脚本(2009,4)
ダンス公演“MaKuRo2009”開催(2009,8)
アメリカンダンスドリルチームジャパン2010 KAZUEプロデュースチーム“MaKuRo-eve”ノベルティ大学部門優勝/ベストコスチューム賞 受賞(2010,8)

http://kazue-t.com/


作品性よりも、視覚的に意識。CHUPPAでやれた貴重な経験。

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KAZUEちゃんとはCHUPPAからの知り合いになるので、それまでのことについてお聞きしたいなと。まず、ダンスを始めたきっかけから教えてください。

KAZUE

KAZUE小さい頃からマイケル・ジャクソン、ジャネット・ジャクソン、マドンナに興味があって、かなり影響を受けました。

高校生のときに、ダンス部に入りたかったんですが、そこにはチアリーディング部しかなくて、そこで本格的に始めたのがやり出したきっかけです。ただ、ひとつ上の先輩から始まった同好会のようなものだったので、技とか組体というよりは、ダンスに近いことをやっていました。顧問の先生がもともとダンスをやっていたので、先生としてはダンスの基礎を教えてくれたんです。

高校の終わりくらいに、地元の小さいジャズのダンススクールに通い始めました。私は、高校3年間のチアの経験を生かして、大学ではソングリーディングをやりたいがために大学に行ったんです。でも、漠然とインストラクターとかダンスの方面の仕事に就きたいという思いもありました。

大学に入って、ソングリーディングが自分の求めているものと違ったので、1年くらいでやめちゃったんです。そこからダンススクールに通い詰めて、大学4年の頃にCHUPPAになりました。それまでCHUPPAはFUKO、MAIKOが2人でやっていて、私はその頃大学生でダンスをやっていなかったので、2人だった頃のことは知らないんです。

2003年のa-nation‘のアクトダンサーでふーちゃん (FUKO) と出会いました。MAIKOとMIWAがつながっていて、ジャズでチームを作りたいという話をしていて、この4人が集まりました。最初はチームで、という感じではなく、単にユニットとしてやっていこうという感じでした。

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今やダンスシーンを動かす濃い4人が当時集まったもんだね〜(笑)。

KAZUE

OHJIさん主催のDANCE TRIBEというダンスイベントに出ることになって、ユニットでやっていたのでチーム名がなかったんです。OHJIさんにユニット名を作ったほうがいいって言われ、MAIKOとふーちゃんがいるし、2人でやってたチーム名のCHUPPAでいいじゃん!ってなりました。

当時は、ゲストダンサーに憧れたり、踊ってお金をもらえるようなダンサーになりたい!という目標と、とにかくうまくなりたい!という目標があったので、がむしゃらに面白い作品を作ろうとしていましたね。今思うと・・・若かったなぁと (笑)。

やっていた内容は、あのときだからこそできたことだと思いますね。かわいいものとか、かっこいいものとか、作品性というよりも、視覚的な部分の意識は強かったと思います。

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KAZUEちゃんから見て4人のバランスはどうだった?

KAZUE

KAZUEみんな意見を出し合っていましたが、わりと構成とかはMIWAが考えて、ふーちゃんは発想だったり衣装だったり、MAIKOは動きそのものを生み出したり・・・。私は、「ここに車の音“ブーン”を入れて、それに合わせて目で追いたい」とか、演出を入れるのが好きだったので、今思うと、全体の作品の流れを意識していた気がします。4人では2年くらいやりました。

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先日TOSHIYA君とのインタビューで、チーム活動しているダンサーが減っているという話を聞いて、確かに個人での活動の場がいろいろ増えたからかなとも思うんだけど、その中の要因に、チームを続けるのが大変だからっていう意見もあるみたい。チームとして難しいこと、大変だったこと、学んだことってある?

KAZUE

自分の見せたいもの、表現したいものが、いい具合にお互いに出し合えたり、譲りあって、バランスが取れればいいんですけど、お互いが我慢しすぎちゃうような関係になると、そんなに我慢することなんじゃないか、好きでやってるダンスなんだから、何のためにやってるのかわからなくなってしまうことはあるかもしれません。やりたい方向性があまりにも違いすぎちゃうと、そこのバランスが難しいと思いますね。

本当にCHUPPAでやれたことは貴重なことでした。いろんなところに出させてもらったりとか、メンバー同士で得るものも大きかったです。

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CHUPPAとしての何かエピソードがあれば教えて。

KAZUE

KAZUEMAIKOが東京☆キッズでやりたいことが見え始めていた時期のCHUPPAの衣装探しは、どんどんエリアが拡大して、ゴスロリ系の店にものすごく行きたがっていました(笑)。

これも本当に笑い話なんですけど、一度、ふーちゃんの別荘に行くことになり、着いてまず、、掃除から始めました(笑)。4人で楽しく遊んだ本当にいい思い出です。

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それからMAIKOちゃんとFUKOちゃんが抜けて、FUYUMIちゃんが入った3人になるんだよね。

KAZUE

最初はMIWAと2人でやってたんですけど、やはりエンターテイメントなショーを見せたかったので、人数的に見せられるショーには限度がありました。あと、それまでのCHUPPAのもたれていた小さくてかわいい印象を、もう少し大人っぽくしてみたくなり、ジャンルにあまりこだわらない、いいダンサーと踊りたいという気持ちで、ヒップホップも踊れるFUYUMIを誘いました。

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そうしてCHUPPAからだんだんとKAZUEちゃんの中からMaKuRoが生まれていくわけだけど、そこまでを振り返って、何か転機になったことってあったのかな?

KAZUE

KAZUEずっと自分の表現したいものが、クラブの中だけだと収まりきらないと感じていました。たとえば、出捌けが片側だけだとか、照明が合わないとか・・・。それがだんだん溜まってきていた時期に、スタジオの発表会という大きなステージの監修を頼まれたり、MIKEYのカンパニー・Vanilla Grotesqueに参加させてもらったり、同じ年にラスベガスでシルク・ドゥ・ソレイユを観たりして、改めてただ踊ることだけじゃなくて、創り上げられた演出をやりたいと感じました。それがMaKuRoにつながっていきました。

最初は、本当に何から初めていいかわからなかったし、作品の進め方は何となく経験していましたが、運営に関してはまったく分からなかったので、バニグロでお世話になった市川さんと田村さんに相談しました。そうしてやったMaKuRo1回目は、本当に大変だったけど、本当にやってよかったです。やっとスタートが切れたんだなと感じました。

でも、1回目は特にスタッフも決めずに、仲のいい生徒に手伝ってもらった感じで進めていったので、スケジュール管理、場所の押さえ方、お金のことなど、ありとあらゆることを考える暇もなくて、とにかくがむしゃらに動いていた気がします (笑)。

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実際やってみないとわかんないんだよね。でも、いいスタートが切れたのはすばらしいことだよ。そもそもMaKuRoっていう名前の由来は?

KAZUE

マクロの意味は「広い視野で」っていう意味なんですが、カメラのマクロ機能から取ったんです。早く名前を決めなきゃいけないっていうときに、手当たりしだい目に付いたものから探していて、ちょうどその場にカメラがあって、「マクロって、なんか響きがいいじゃん」と。意味も良かったので、決めました。


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今回のMaKuRoはどんな感じ?

KAZUE

KAZUE今回は2部構成になっていて、1部ダンスショーが約25分。2部はコレオ作品がつながったストーリー仕立ての60分です。

2部は、死んでしまった母親に会いにいくために、男の子が旅に出るというファンタジーです。今度は2部のダンスショーだけでも、人数を増やして公演をやりたいな〜とも思ってます。

ダンスをもっと一般の人に普及させたい。


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KAZUEちゃんが創っていきたいエンターテイメントの中で大事にしていきたいことは?

KAZUE

KAZUEダンスをもっと一般の人に普及させたいですね。家族や親戚を呼んで、座ってゆっくり見てもらいたいので、そういうところから一般の人にも見やすい環境を作っていきたいです。あとは、ダンサーが出ることでお金をもらえることや、いろんなクリエイターが作品を発表できる場を作りたいですね。もっといえば、自分自身もまだまだですが、育ってきている生徒の子たちに舞台に立ってもらう機会を作ってあげたいという想いもあります。

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あとは、そこの需要と環境を整える作業だよね。ダンスの見やすさ・表現のチャンスを一般に広めて、さらに自分も表現していきたい気持ちがあるんだね。今、裏方と表舞台の両方に立っているわけだけど、そのバランスはどう?

KAZUE

本当は裏方に徹するなら徹したいという想いもあるんですけど、でも、まだまだダンスをがんばりたい気持ちもあるので、今は両方やってます。

でも、そこはすごく悩みますね。たぶん、どんなバランスが正解とかはないと思うんですが、今の自分は完璧を求めず、今できることの最大限が出せるようにとにかく努力をして、その結果が今の形だと思っています。踊れなくなったときにも演出はやりたいと思うので。まったく想像はつかないんですけど。

TDM

私も今回のWORLD WIDEに出たときに、プレイヤー同士じゃないとわからない感覚ってあるなって思った。プレイヤーとしてもやってるほうが伝わることがあるんだよね。今回でいえば、結果的には自分もダンサーとして出たほうがよかったことが多かったから、また悩む。裏方もプレイヤーもやることには、メリットもデメリットもあるんだよね。今回は出よう、今回は裏方に徹しようっていう選択ができるのは、配慮としていいことかもしれないけれど。

KAZUE

KAZUE確かに、プレイヤーとして出てるから分かることはありますね。でも、実際私はそこまで出ることに執着していなくて、最近の気持ちだと、とにかく作品を残したいんです。映画のように。

でも、ダンスは生ものだし、そういう方向が正しいかは分からないんですが、自分が好きなミュージカルや映画のように、映像になり、音楽も残り、作品として言い継がれていくような作品を創りたいですね。

TDM

なるほどね。KAZUEちゃんは脚本家に近い感覚を持っているんだね。ストーリーはどういうところから作るの?

KAZUE

MaKuRoの作品は、知人と2人で考えているんですけど、発想としては、たとえば、「子供を主役にしたい」「こういうメッセージを伝えたい」とか、やりたいステージの画が浮かぶので、それを掘り下げていきます。

言葉のないダンスでストーリーやメッセージを伝えるのもいろいろと限界があるので、ストーリーはごくごくシンプルに、演出をいかにおもしろくしていくかを考えていきます。やりたい曲が先に決まることもありますが、大体はシーン・テーマを決めて、それに合った音楽を探します。あとは、お客さんをどこでどういう感情にさせるかを明確に割り振っていきます。

前回が男女愛だったので、今回は親子愛・家族愛をやりたいと思ってて・・・あとは漠然と男の子2人を主役にしたいと思ったので、そこから広げていきました。ダンスだけでストーリーを展開させていくことは本当に難しいので、お客様の視点でどう見えるかはすごく意識しますね。

あと、絶対ポジティブに終わるように決めています。観た人が、明日からまた頑張ろうって思ってくれたり、見てよかったって思ってもらえることを目標にしていますね。


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一緒に作品を創る仲間として必要な人は?

KAZUE

KAZUEしっかりとそのストーリーを理解してくれて、演出を組んで作ってくれる人。単にダンスが面白いだけではなく、伝えたいメッセージ、シーンの重要性、キャストの心情、キャラクターをわかって、うまく組み込んでくれる振付師さんですね。すごく難しいと思うんですが・・・。

作品の舞台背景は日本ではない、どちらかといえばヨーロッパというか、どこかともわからないような場所に設定していて、感情的には日本人特有の繊細な部分を見せたいんです。今回の作品はお葬式のシーンからスタートするんですが、母親を亡くした主役2人の、その幼い子供だからこそ出る感情をうまく表現しつつ、ダンスショーと絡めることができる振付師さんは、一緒にやってて楽しいですね。ただ単に演技ではなくて、ダンスやフォーメーションに組み込みながらという作業はとても難しいと思うんですが、難しいからこそ作っていくのがとても楽しいです。

TDM

自分が必要とする人がわかって、そことつながっていけるのは大事なことだね。

KAZUE

クラブイベントに行って、すごく素敵な作品を見たら、「次はあの人にこういう場面の作品を創ってもらいたいな〜」って思ったりしますし、振付の仕方を観て、「この人のスタイルだったら、ここが合うなぁ」などのイメージがだんだんついてくるので、振付師さんそれぞれに創ってもらいたい作品の傾向があります。今は本当に振付師さんあっての公演なので、本当にありがたいです。

制作側として。表現者として。


TDM

MaKuRoとしての、展望は?

KAZUE

KAZUE前作も近作も、いつかはオリジナルの楽曲でやりたいんです。そうなると、まず楽曲がよくないと残らないので、今はとりあえず、在りものの曲でもいいから、作品を創っていきつつ、それぞれがいろいろな演出を面白くしていこうとしている段階ですね。

3年・・・3年以内にはオリジナルでやりたいですね。でも、オリジナルを作るのは本当に大変だし、時間もかかるので、あっという間だと思いますが、今は漠然と目標として考えています。今はいろんなコレオさんに入ってもらって作品を創っていますが、いつかは私一人の長編の作品を創ってみたい気持ちもありますね。

ただ、今回のMaKuRoが終わったら、またプレイヤーに戻ろうと思ってます。プレイヤーとしてやりたい作品もあって、それは公演でやりたいものとは別なので。コンテストとかも出てみたいし...(笑)。

とにかくやってみる!そうすれば新しい道が開ける。


TDM

最後に、KAZUEちゃんのように、これからいろんなことを発信しようとしているダンサーに、何かメッセージをお願いします。

KAZUE

KAZUEとにかくやってみることだと思います。思いついたら動き出す、それに尽きるかな。

そして作品を創ることは、踊りだけではなく演出も考えられないといけないので、感性をすごくクリエイティブにしていくことが大切だと思います。たとえば、建物の形から受ける印象とか、夕焼けの綺麗なグラデーションを見たらあの色を作りたいとか、その綺麗な色を見て感じた時の感覚をダンスで表現したいな〜とか、些細なことだけど日常の中のあらゆるところからインスピレーションを受けてみると、いいのかなと思います。そして、それは、自分の目標でもあります。

TDM

これからも表も裏も精力的にがんばるKAZUEちゃんを応援しています。公演、楽しみにしています。
'10/08/28 UPDATE
interview by AKIKO
Photo by imu
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(Update:10/08/15)


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