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"en4th" 2UCCI/爲谷謙治 〜 we wanna enforce. 〜

2UCCIのインタビューはこちら


"en4th"の始まり。

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"en4th"もスタートから3年目になるそうですね。現在の売れ筋商品は何になりますか?

爲谷

爲谷謙治やっぱりスウェットですね。カラーもいろいろ出ていますが、ベーシックなグレーや黒が人気です。あとはカラーバリエーションもいろいろあるので何色も持ってくれている人もいますよ。

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店舗は地方にもあるんですか?

爲谷

いや、まだないんですよ。販売のメインは都内のOSHMAN’SさんやDANCERS COLLECTIONさんと、インターネットショップですね。イベントでも物販ブースを出したりしましたが、なかなか大金を持ってイベントに来る人はいないので・・・。ゆくゆくは"en4th"ショップも作りたいですが、現状では難しいですね。

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今後の展望は?

爲谷

2010年11月初旬から大阪のブレイキンチーム・MORTAL COMBAT(編集部注:以下モーコン)とのコラボTシャツを発売します。それをきっかけに、いろんなダンサーやブランドとのコラボを考えています。

ブランド同士とは言っても、うちはあくまで機能性とシルエットがメインなので、そこに、それぞれのダンサーやブランドのグラフィックがプラスされればOKかなと。

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モーコンを起用したきっかけは?

爲谷

爲谷謙治SAMさんのダンススタジオSOUL AND MOTION大阪校のインストラクターにモーコンメンバーがいたり、同僚の2UCCIともブレイカーつながりだったりしますからね。

また、今年のJAPAN DANCE DELIGHTで優勝したことや、「BATTLE OF THE YEAR」の日本代表として日本を背負って戦ってきてもらうので、「みんなで応援しよう!」というタイミングだったので。

もちろん、ブレイカーに限らず、いろんなジャンルのダンサーさんとコラボしていけたらと思っています。

ただ、ほかのブランドさんとなると、大人のダンサーが好きなブランドって本当に人それぞれなので、なかなか難しいです。キッズは分かりやすいんですけどね。

TDM

なるほど。でも、どこのブランドにしろ、ダンサーはかっこよければ手に取ると思いますよ。 そもそも"en4th"の名前の由来は何なんですか?

爲谷

ダンスに対して、物理的にも精神的にもいろんな意味で強化 していきたいというところで"en4th"とつけました。数字の4には、生活に必要な要素の衣食住、そしてその次に「ダンス」が4つ目の要素という意味を持たせています。

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このプロジェクトが始まったきっかけは?

爲谷

もともとプロジェクトの始まりは、TRFのSAMさん、ETSUさん、CHIHARUさんから、「これまでダンサーとして長年活躍させてもらってきて、これからの日本のダンス業界に対して何か貢献できることをしたい」という話があったんです。

ゆくゆくは大きい意味でダンス業界をサポートするようなプロジェクトにしようと。しかし、まずは企業としてやっているので、利益がないと会社としては成り立たない。ダンスをサポートしながらも利益を上げるビジネスとしてやっていくには何がいいかと話していたときに、SAMさんが、「ストリートダンス向けのウェアってないよね。」って言ったことから始まりました。

激しい運動量のストリートダンスには、ある種アスリート的な要素があるし、人に見せるという立場上、レッスン中であっても、ウェアはなんでもいいわけではないし、シルエットも気になる。Tシャツやスウェットはすぐ汗だくになるし、もう少し高い機能性があるものってないよね、と。

ストリートダンサー向けにいろんなブランドが存在していますが、その“機能性”という意味で着目しているところはない。

ダンサーがレッスンで着るアパレルとしては、ビジュアルの面では代用品はいっぱいあると思いますが、そこではなく、エイベックスのような企業だからできることを考えました。機能性のあるアパレル製品を作れるメーカーさんを考えたときに、なかなか、一個人と物づくりはやってくれないんですよね。特に日本国内で高い技術を持つミズノさんとの開発は、エイベックスだからやれることなのかなと。

でも、おそらくエイベックスというメジャーなイメージが一部のダンサーからするとネガティブに働くかもしれないということで、「エイベックス」「ミズノ」という名前を伏せて"en4th"というブランド名だけでやっていったほうがいいということになりました。商品を買えば分かることではありますし、最終的に"en4th"というブランドは本当にダンサーのためにできたブランドであるという僕らの考え方は伝わるかなと思ったので。

だから、広告ビジュアルでもエイベックスのアーティストを使うのではなくて、本物の海外ダンサーを使わないと伝わらないということでEJOEやJANELやEBONEを起用しました。

純粋・マジメ・頑固なダンサーたち。


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爲谷さんがそのプロジェクトに入ることは決まっていたんですか?

爲谷

もともとTRFのマネジメントの方と知り合いで、自分がアパレル業界で働いていたこともあって、たまたま相談に乗ったのがきっかけです。それまでは、ダンスのことはまったく知りませんでした。

"en4th"をきっかけに、ダンスイベントやダンススタジオをいろいろめぐって、ダンサーさんと話しているうちに、「ダンサーってこんな人たちだったんだ!」と、今までの先入観が取っ払われました。

ダンサーの皆さんって、ものすごくピュアですよね。見た目は一般の人が話しかけづらいような人もいっぱいいますが(笑)、ものすごくマジメ。話すと、巷にいる同年代の子たちよりもしっかりしているし、上下関係もあって、ものすごく純粋だと思います。

TDM

確かに。不器用にも見えますが、ピュアなんですよね。

爲谷

本当にダンスが大好きでしょうがないんだなって感じます

ダンスが生活の一部で根付いていて、ものすごく新鮮にも映るし、もっと覗き込んでみたいなと興味がわきました。僕がもう少し若かったらやりたかったなという気持ちにしてくれて、じゃあ僕ができることならどんどんやってあげたいなと思いました。

あとは、日本のダンスシーンが、こんなにすごいと知らなかったですね。

ダンスの情報を調べていくうちに、こんなに世界大会があって、しかも日本人が優勝してるという情報は一般のメディアには出ていないし、「日本のダンスってこんなにすごいんだよ!」って僕みたいな普通の人に広めたいなとも思いました。

TDM

爲谷さんが感じたダンスシーンってどんな印象ですか?

爲谷

本当に体育会系だなと思います。ストイックだし、すごく頑固。いい意味でも悪い意味でも・・・シーン自体が頑固なんですよね。あまり外に対して媚びを売らないし、みんなが誇りを持ってダンスをしているように見えます。

しかし、「ほかの業界がどうであろうと、ダンスシーンだけで盛り上がる。」って感じなのですが、それをもっと広げないともったいないと思います。今はみんなが頑固なので、まだ広がっている気がしないです。

今キッズダンサーが増えていて、彼らにはまだそういう内側にこもった考え方がないから、5年後、10年後、ある程度のダンサー人口が増えたときに、その子たちの気持ちがもっとオープンに外の業界に対して広げていけるようなシーンにしていければ、もっと業界を超えたコラボレーションも増えて、発展できる気がします。そして、ダンサーももっともっと社会的な地位が上がるんじゃないかなと。

TDM

ダンサーは頑固というか、自分から飛び込むのが苦手なんですよね。お願いされればやるけど、自分からいろいろ行ける人が少ない。そこに爲谷さんのように外に向くきっかけを与えてくれることで、知り合ってしまえば前向きに心を開きやすいと思います。

爲谷

あとは、ダンス業界の中でお金を回すのではなくて、外からお金を引っ張ってきたり、また外にも出して、お金を回すことができるようになれば、いいかなと思います。

TDM

ダンサーにはそういう考えは難しいかもしれないですね。ダンサーからお金を取ろうなんて気持ちはさらさら無いんですけどね。

爲谷

爲谷謙治ダンスって、ダンサーからお金を取っちゃいけないんじゃないかなって思います。せっかくあれだけのパフォーマンスをできる能力を持っているんだから、芸術と同じように外に売る感覚というか、パフォーマンスを売っていくということが当たり前になっていけば、もっともっと大きくなれる気がします。

テレビのコマーシャルでもダンスを起用してるものも増えてきて、近年で徐々に変わってきているとは思いますけどね。

ダンスは極端に言えば原始人でもやっていたようなもので、言葉に代わる要素がありますよね。いろんなダンサーから海外で言葉が分からなくても、ダンスで心が通じちゃうという話をいろいろ聞きました。

今の日本のダンスシーンを見ていて、すごくストイックなのはいいことなんですけど、なんだか競技化している気がします。もっと気軽に、楽しめるシーンがあってもいいんじゃないかなって思う部分もあるんです。

“一見さんお断り”的な。初心者が入れない世界はもちろんある種かっこいいんですけど、もう少し間口を広げて、おじいちゃん、おばあちゃんから、子供や大人まで全世代と、第一線で活躍しているダンサーとが楽しめたりしてもいいかなと。

もちろんすべてがそうあるべきというわけではなく、ストイックなシーンも必要ではありますが、ストイックなシーンが進みすぎている気がするので、ゆくゆくは、今のキッズたちが大きくなったときに、そういうシーンもあって欲しいですね。

ウェアに対してもストイックでした (笑) 。

TDM

参加しやすく、楽しむためのダンスという役割も具体的に果たされているといいですね。こうしてダンサーに発展する可能性があると感じてくれているからこそ、"en4th"として爲谷さんがダンスシーンのサポートを続けてくれていると思うんですが、3年間ダンスシーンと向き合ってみて大変だったことはありますか?

爲谷

一番最初に、ダンス業界の中で派閥があるという話を聞いたことがありました。「何で?」と思いつつ、"en4th"を広めるために、まず、どこから行けばいいのか身構えちゃったりしましたね。

でも、実際今活躍している方たちと話してみると、全然そんなことはなかったですね。自分もダンスをしていなかったので、そういうものを感じずに話せたのかもしれませんが、おそらく、そう感じているのは一部の人たちだけだと思いました。

あと、苦労したのは"en4th"の機能性がなかなか伝わりづらかったことですね。実際に商品を触ってもらうと、すぐにこれは良いって伝わるんですが、扱っている店舗が少ないので、実際に手にとってもらえる機会が少ないんです。確実に伝わるミズノさんの技術に自信を持ちつつ、まだまだ展開が必要なのが現状です。

TDM

今までの"en4th"としてどういう商品開発をやってきましたか?LAのダンスシーンはどう映ってる?

爲谷

爲谷謙治一番最初は、商品開発の時点でSAMさんETSUさんCHIHARUさんにヒアリングをして、どういうものが必要かを事細かに聞きました。サンプルを作るとき、脇の空き具合をミリ単位で指定されたときには、いろんなアスリートを手がけてきたさすがのミズノさんも「そこまで言われたことは無いですよ」と驚いていました(笑)。ダンスだけでなく、ウェアに対してもこだわりがあって、ストイックだなと感じました。

サイズ感というところで、ほかの競技とは違う、ダンサー独自のものを感じました。特に、スウェットに関してのあのダボダボ感は、ミズノさんからも「本当にこんなに大きくていいんですか!?」と確認されましたし。アスリートのウェアはいかに抵抗を無くすか、と言うところで、細みの追求になりますが、ダンスはパンツを太く太く・・・ですからね。

スニーカーもSAMさんやCHIHARUさんにミズノの研究所に来ていただいて、全身タイツに近い格好になってもらって、動作解析をした上で開発しました。そこでも、ダンサー独自のデータが得られたんですが、アスリートが片足で一回転を回ることなんてまず無いですよね。バスケットボールでも方向転換くらいですが、ほとんど親指の付け根に重心がかかる動きがスポーツでは多い中で、ダンスでの一回転する場合、軸が人差し指の付け根にかかります。そういった違いがいろいろ出てきました。

あとは、レッスン中は音楽で耳も使っているので、靴が「キュッキュッ」という音が気になると言われ、ミズノさんには音がならないようなゴムの硬さなどを検証していただいて、それに合わせたソールを作ってもらいました。そのまったく違う観点が、面白かったですね。

この機能の違いを、やっぱり多くの方に体感して欲しいし、それだけこだわっている人を僕らも"en4th"を通じてサポートしていきたいですし、そういったダンサーが日本から世界にどんどん羽ばたいていってくれたら面白いですね。

もちろん活躍しているダンサーだけでなく、そこを目指している人たちを増やして、応援していきたいのでそういった人にもぜひ着て欲しいですね。ダンス業界と一緒に"en4th"も広がっていけると良いなと思います。

TDM

そういう風に"en4th"がダンサーのことを考えてくれているとは、ダンサーには伝わっていないかもしれないですね。

爲谷

なかなか、難しいかもしれないですね。

僕らの本意としては、ただ儲かれば良いというわけではなく、たとえば、ミズノさんのバットやグローブが今アメリカで人気になっているのは、イチロー選手や松井選手といったトップアスリートのサポートをミズノさんがしているからなんですが、同じように素敵なダンサーをサポートしているブランドとして注目されるようになると良いなーと思いますね。

ま、そこが利益にもつなげなければいけないビジネスとして難しいところなんですけれども・・・。

「日本ってダンス天国だよね」って言われたい。


TDM

現状の手ごたえはどうですか?

爲谷

モノ自体は良いと思ってくれているのですが、正直、値段が安くないので、そこが大きなハードルですね。

僕らも安くはしたいんですけれども、なかなか数が出ないとコスト削減の手段も取れなくて、値段を下げることもできないんです。とにかく今は、一人でも多くの人に商品の良さを分かってもらって、愛用し続けてもらおうと思っています。

単純に安いTシャツやスウェットはたくさんありますが、根本的にダンサーをサポートする"en4th"のTシャツやスウェットは踊りやすさを考えているところは曲げないですね。

TDM

過去にアパレルを経験されて培われたノウハウとは共通していましたか?

爲谷

全然違いましたね。今まではとにかく見た目重視で、流行やほかのお店ばかり気にしていました。ですが、"en4th"の場合、良くも悪くも競合がいないんですよ。比較のしようもないし、模倣することもできないし、いつもすべてが無の状態からスタート。機能的なところを普通のブランドとは比較できないので、そこの検証にいつも苦労していますね。

TDM

逆に"en4th"にしかないという個性が強みですね。

爲谷

そうですね、だからこそ楽しい部分もあります。ミズノのストリートダンスのための機能性を重視したアパレルは今までなかったですから。僕個人としてはエイベックスという会社に入ったからこそそれができてよかったなと思います。絶対にエイベックスでないとできないことだと思うので、そういう意味ではすごく感謝しています。

ミズノの担当者さんも楽しんでくれているので、なかなか利益が上がってはいませんが、お互い何とか続けていこうと思っています。ダンス業界が大きくなったときに、僕らもやってきてよかったねと思うんでしょうけどね。

TDM

何をもってダンス業界が大きくなったと実感するんでしょうね。

爲谷

爲谷謙治たぶん、ダンスシーンに終わりはないと思うんですけど、発展するとしたら、たとえば、企業がストリートで練習する場として、深夜の地下駐車場を開放してくれたらいいよね、とよくチームで話しているんです。誰も使っていない駐車場なんて全国各地にあるだろうし、大音量を出しても怒られない。最終的に海外から「日本ってダンス天国だよね」って言われるようになれば、万々歳だなーと。

TDM

世界の中では日本がダンス天国になる可能性は大きいかもしれないですね。前に話していたのが、銀行の敷地内の地面は平らなイメージがあって、建物は基本ガラス張りだし、ダンスの練習に適しているなと思って、全国各地にもあるし、もし営業時間のあとの銀行を解放してくれるようになったらいいよねっていう話だったんですが・・・ま、やってくれるかはまったくわかりませんが(笑)。そういう感覚ですよね。

でも、もしそういうことができる力を持った人の心にダンスが届けば、無い話ではないのかなと・・・。ダンス王国になったらすごいですね。というか、したいですね。

爲谷

本当にそうですね。今のキッズたちで踊れる子たちはいっぱいいますが、10年後、練習する場所はどこに行くかとなったときに、郊外のスーパーのものすごく広い地下駐車場ありますよね。そこにいけるような仕組みがあればいいですね。

TDM

いわゆる、たとえば学校や保護者、地方自治体のサポートのような守られたお金の中でできるダンスの全国大会・甲子園のようなものがあれば協力してくれるんでしょうか。 特に思うのは、地方の子供たちは育っている環境からは出にくいので、遠くに行けない。だから、地方なら地方でシーンを作っていくしかないと思うのですが、そういうところまで届くような仕組みがあればいいですね。年に1度は東京でダンスのコンペティションがあって、学校や地方全体で甲子園に応援に行くのと同じように、東京に集まる、とか・・・。まあ、義務教育に入ってきたら自然と変わってくるような気もしますけどね。 そもそも、爲谷さんがそんな風に「日本をダンス王国にしたい!」と熱く語ってくれる人だということが、嬉しすぎます (笑)。これからもよろしくお願いします!
'10/12/15 UPDATE
interview by AKIKO
photo by imu
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