TDM - トウキョウダンスマガジン

ASTERISK特集 Part2
長谷川達也*仲宗根梨乃 〜 Welcome to ASTERISK 〜
長谷川達也*仲宗根梨乃 〜 Welcome to ASTERISK 〜
来る5月18日(土)〜19日(日)、東京国際フォーラムにておこなわれる進化系ダンスエンターテイメント「*ASTERISK(アスタリスク)」。ASTERISK特集第二弾は、演出及び主役を務める長谷川達也さんと、同じくダンサーで主役の仲宗根梨乃さんとのクロストークをお届けする。

取材を行ったのは梨乃さんがはじめて参加した全体リハーサルの翌日だったため、まだ会って数日の2人は、これからはじまる怒涛の稽古を前に少し緊張しつつも、期待に胸を膨らませている様子が伝わってくる。

いよいよ今週末に迫ったASTERISKでは、この2人を中心に、ダンサーたちの才能が掛け合わさり、誰も見たことのない世界へと誘ってくれるだろう。2人の役柄にもご注目!いざASTERISKワールドへ。

ASTERISK特集 Part1はこちら



“私に与えられている役割はこれなのかな”

TDM

昨日は全体リハ、お疲れ様でした。ずっと真剣でしたね。

梨乃

私ね、演出する達也さんご本人が踊られるのがすごいと思ったんです。ものすごいですよ。

達也

いや〜、でも、今回、僕は本当は踊らない方がいいんだよね(笑)。

梨乃

わかる!(笑)。私ならToo much!

達也

そうそう。だから、大丈夫かな?と思ってます。

梨乃

達也さんならできるできる!大丈夫だと思います!

達也

DAZZLEでは自分で創って、踊っているんですけど、本当は今回、僕に代わる方がいればその人にやってもらいたかったんです。でも、いろんな問題もあって・・・。

あと、僕は創り手でも踊り手でもあるのと、一番作品の理解度が高いことから、そういった選択をしました。

梨乃

素晴らしいわ〜!すごいと思います。

達也

いやいやいやいや。とんでもないです。まだまだこれからがもっと大変です(笑)。

TDM

ダンサーは梨乃さんと踊れることも楽しみにしていますよ。

梨乃

うそ〜〜!!私なんてとんでもないですよ〜! 私は今回の参加をとても光栄に思っております。

達也

こちらこそですよ。ありがとうございます。

TDM

初日のリハを終えてみて、いかがでしたか?

梨乃

いろいろ思うことはありました。でも、とにかく私はこうやって日本で、年齢関係なく、いろんな幅で活躍されている日本人の素晴らしい方々と一緒に何かができるっていうのが本当にうれしいです。

子供たちを観てもやばかったし、私はただ立っているだけなんですけど、その周りでとってもすごいことが起きている!私はjust standing!!周りを観たいけど、観れない!(笑)

いろんな映画の中に入ったようで、すごく楽しんでますけど、これからでしょうね、私がパニクるのは(笑)。

なので、様子を見ていたというか、“私に与えられている役割はこれなのかな”っていうのが初めてやっとお会いして、味わっていました。

達也

本当はいろいろ踊っていただきたいと思っているんですけど、なかなかこちらも様子を見ながらやっているのもありますし、時間的な問題もあるので。

立っているだけとか、仕草だけにとどまっていることが、逆にストレスにならないといいなと思ってます。ダンサーとして存在しているので、“私も踊りたい”と思ったら、逆にどんどんいっていただければ。

梨乃

全然私は踊りたい!でも、例えば、JIL Entertainment Galleryの皆さんのようなトレーニングが必要なスキルの場合は、ちょっとパニクります。でも、それは挑戦の意味で、もちろんやりたいですよ。ダンスは大好きなので。

今回、うれしかったのが、最近私はずっと振付のお仕事ばかりで、“自分が踊りたい!”と思っていたので、この話をいただいて、OH MY GOD!って感じでありがたかったです。でも、やっぱりちょっと怖いです(笑)。

達也

ほかジャンルのことに挑戦しなきゃいけない部分があるので、そこがたぶん怖いかもしれないですね。

テーマ・兄妹愛。  


TDM

梨乃さんが梅棒の世界でどうなるのかとか、想像できないですもんね(笑)。でも、そこが楽しみです。達也くんとは兄妹ですしね。

達也

そうだ。兄妹なんですよね。兄妹に見えてます?見えないですよね?どうしよ・・・お兄ちゃんらしくしないと(笑)。

梨乃

そうですよ〜!お兄ちゃん!客観的に、昨日のリハでは、兄妹に見えましたか?

TDM

昨日は、正直見えなかったですね・・・(笑)。

梨乃

笑。

達也

そうですよね!だってさ〜、梨乃さんは凛々しいし・・・。

梨乃

そうそう!私の方がお兄ちゃんに見える!(笑)。 達也さんは兄弟います?私は妹がいます。

達也

僕は兄がいます。

あ、やばい!実際と逆だ!何とか兄としての設定をうまく持たせられるように頑張ります(笑)。

梨乃

でも、男女愛の方が、正直、表現するのは簡単じゃないですか?しかも、外国人だと、よく“Hey!My sister, brother!”って言ってるくらい馴染みがありますけど、日本人って、あまり兄弟愛を見せないじゃないですか?だから、そこは、どう描こうと思ってますか?

達也

確かに兄妹愛って日本人はピンと来ないかもしれないけど、でも、恋愛にはしたくないなっていうのはありました。

基本DAZZLEは男性だけでパフォーマンスをしていて、女性が参加しない作品をいつも創っています。

恋愛って普遍的で共感も得やすい。だけど、その分難しかったり、安易になりそうな部分もあるから、普段DAZZLEではなかなか選ばないジャンルです。今回は女性が参加する舞台で、今までのDAZZLEにしたら初めてのことなんだけど、だからといってやっぱり恋愛を選ぶのは僕の作風としては適してないと思ったし、ただ、それでも男女の関係を表現するのに深い絆を創りたかったから、兄妹という設定を選びました。

梨乃

なるほど。でも、リアルライフでは私のことを弟と思ってくれればいいですよ!(笑)。 I'm your sisterだけど、I'm your brotherね!

達也

あ〜、なんとなく、わかる(笑)。

梨乃

なんでDAZZLEでは女性を使わないんですか?

達也

えーっとねぇ・・・男性だけで表現する時に出るエネルギーとか、統一感とか、その部分での純粋さという点ですね。

もし女性がいたら、きっと作品の幅も広がると思うんだけど、あえて男性だけで表現するということが制限でもあり、また強みでもあると思ってるんです。

梨乃

私もBeat Freaksっていう女性だけのチームをやっているので、なんだかおもしろい感覚ですね。

達也

Beat Freaks!存じてますよ〜。YouTubeでたくさん見ました。

梨乃

ありがとうございます〜!

達也

Beat Freaksでの梨乃さんのエネルギッシュな一面を、ASTERISKでもどこかに出してもらいたいと思っています。

仲宗根梨乃の説得力。


達也

梨乃さんはいろんなジャンルのダンスをやってますよね。

梨乃

実はいろいろなダンスをやったということは、ないんです。ただ、見よう見まねでやっていますが、本当に極めているジャンルはないです。

Beat Freaksでもロッキンやブレイキンをするメンバーがいて、その人たちからの振付をもらって、できるのもやっとで、もちろんその種類の練習をするんですけど、だからといって、私はコレ!というジャンルはないです。

だから、もともとマイケル・ジャクソンが大好きで、コレオグラフィーが大好きなんです。ジャネット・ジャクソンが踊る“If“とか、その振付師のティナ・ロンドンとか、アンソニー・トーマスに憧れてます。そういう振付が大好き。

でも、マイケルはポッピンもやってた、ジャズもやってた。マイケルのおかげでいろんな種類にも興味が出て、クラスを受けるくらいで、ジャズやバレエはできない。基礎ゼロ。

達也

そうかぁ。でも、俺も同じかも。

所属してたダンスサークルで仲間たちと有名ダンサーのビデオ見ながら練習するのだけで十分だったんですよね。だから専門的に何かを習うわけでもなく、見よう見まねでいろいろやりました。だから、僕のダンス人生でダンススクールには全部で10回くらいしか行ったことがないんです。

でも、どうにかプロになれたんです。それって僕にとってはひとつの自信でもあって、独学でも意識さえあればプロになれるという。ただ、あるとき壁にぶち当たるんですよね。“俺、あんまり基礎ねぇな”と。やはりその道のプロに基礎を教わってないから、基本がなくてヘッポコなんですよ。どちらかといえば、発想とか、アイデアとかそういうもので勝負してきたタイプなんです。

梨乃

とんでもないですよ。何をおっしゃる。でも、私も好きでやってきている一本なので、それだけですね。ダブルターンができたら、奇跡くらい(笑)。ターンの振りが訪れるごとに、OH MY GODです。

達也

同じ同じ(笑)。でも、梨乃さんには日本の人にはない独特な説得力がある。経験してきたものなのか、人間的なものなのか。その両方であるとも思うんですけど、表現における基本的なメンタリティが違う気がする。

「私、全然、大したことがないダンサーなんです。」って言ってるけど、そう言われても全然ピンとこなかった。そう言ってることが信じられないくらい、ダンスで説得されてたんです。それを持ってるのが素晴らしいことだなと思ってるので、それをぜひこの公演でも出してもらいたいと思います(笑)。

梨乃

が〜んば〜るぞ(笑)。私にとって挑戦ですけど、本当に楽しみです。演技も入ってくるから。WOW!!

個性的な出演者たちの気持ちのベクトルがズレないように。 


梨乃

日本以外に踊りに行ったりしたことはありますか?

達也

あります。DAZZLEで海外公演を経験しました。韓国、ルーマニア、イラン。あとは、ロスでコンテストに出たこともあります。

梨乃

いろんな国に行ってどうでした?

達也

いや〜、もうね。月並みですけど価値観の違い。

ルーマニアとかイランって、独裁政権のもとで生活も、表現すらも抑圧されて生きてきた国なんです。だから、アーティストはそれぞれ自分たちが表現したくても自由に表現することが許されなかった。

例えば、ルーマニアは、現在、政権が崩壊し、自由に表現できるようになったけど、当時は歌にしても芝居にしても、国を否定するような内容は一切表現できなかったわけです。でも、そんなの中、たくみに制限をかわして必死に考えて創作してたんですよ。だから、ルーマニアで感じた表現の力強さみたいなものって、その時代に培った情熱、抑圧されたエネルギーが解放されたものなんだってすごく納得したんです。

日本だと、好き勝手に表現できちゃう。人が死んでもいいし、血が出てもいいし、裸になってもいいし、何を表現していけないものはほとんどない。ところが、イランだったら全部ダメ。逮捕されて投獄される。

だからといって、イランの作品がつまらないわけではなくて、すごくおもしろい。 日本は、好きなことができるから恵まれてるのかと思うと、そういうことじゃなくて、制限が発想を鍛え、その力は自由に表現できる土地ではなかなか生み出せないものかもしれません。

そういう価値観を海外に行って得ることができて、すごく大変だったけど、すごく良かったし、おもしろかった。

梨乃さんはアメリカ以外の海外にはいろいろ行ったりしますか?

梨乃

ワールドツアーでヨーロッパ、アジアに行かせていただきました。アフリカとかイランとかは行ったことないんです。でも、最近は本当にアジアが多いですね。

達也

アーティストの振付ですよね。日本でも韓国人アーティストの振付で注目をされて名前が知られたし、僕もそれで梨乃さんを知りました。

そもそも、どういう経緯で彼女らの振付をすることになったんですか?

梨乃

私がアメリカでクラスを教えていて、どなたかがYouTubeに私のクラスをアップしたんです。それを、韓国の方が見てくれていて、「今度デビューするアイドルの振付をお願いします。」と言われたのがきっかけです。

私は、マイケル、ジャネットを見て育っているから、そこで見てきた振付師のいいところが、絶対私の振付の基礎にはなっています。その曲にしかない振付を創りたいと思っているので、それはマイケルやジャネットから学んでいます。

達也

振付をする時って、けっこう練ってからやる?それとも、その場で?

梨乃

両方。あとは、フリースタイルしながらパッて出た振りとか。

最近は、振付のリクエストが非常に難しい時もあるので、それにあわせて内容を考える。でも、私考えたらあまり良くないタイプですね。

達也

あ、わかる気がする。感覚的に創りそうだね。

梨乃

そう。考えたらアウト。最近は必ずアシスタントの人をつけるからこそ、誰かがいるからこそ、私の良さが出せるというのが今の私です。前までは、全部私ひとりでやってました。だから、今は逆に、誰かと互いにいいところを出し合いながら創れることを楽しんでます。

ダーツやったことあります?

達也

ダーツ?あるある。

梨乃

あれをやると、考えずにやった方が、バッチリ真ん中に当たるわけです。考えて投げると絶対外す。的にも入らない(笑)。

That's my lifeですね。ダーツと私の人生は似てます。

達也

なるほどね。逆に僕は考えないとダメだから。感覚でやると全然ダメ。だから、感覚でいける人に憧れる。無い物ねだりだね。

梨乃

達也さんの作品観てたら、わかります(笑)。私も大人数の構成とかを考える時に本当に大変。

達也

だよね。あれって本当にいつも大変で、苦しくて苦しくてしょうがない。

梨乃

わかる!わかるから、今回、達也さんは本当に良く踊るなぁ!って思う(笑)。あ、ごめんなさい(笑)。

達也

(笑)。頭の中にあるものを人に伝えなきゃいけないでしょ。それがもっと簡単にできればいいのになって思うんだけどね。

TDM

でも、達也さんの構成表は素晴らしい!優しさが出てる!私のなんて、誰も読めませんよ(笑)。

梨乃

みんな全然違う環境で活動してきてる個性的な人たちだから、それが一同に集まって公演を創る時に、気持ちのベクトルがズレズレになるのがいやだなと思って。どういうモチベーションで舞台に立ってるのか、それがズレちゃうと、空間が歪んでくるというか、伝わらなくなるので、みんながなるべく同じ方向を向くというのは大事。そのために僕のイメージをなるべく分かりやすく伝えるべきだと思ってるんです。

各団体単位だとそれはできてくると思うんですけど、まとまった時に、“私たちだけが頑張ればいいじゃん”と思う人と、“みんなで公演を良くしたい!”って思ってる人とでは、違ったりするだろうから。

TDM

昨日のDAZZLEを中心としたリハを観てて、ほかのダンサーとやっても気が引き締まるのと、ちゃんと演出に対して「応えなきゃ!応えよう!」っていう気持ちには絶対なってもらえる空気をちゃんと作れてると思いました。

達也

そうですか。それはうれしいです。僕はもういっぱいいっぱいですから(笑)。

梨乃

私は楽しみですよ。夢の世界にお客さんを引きずること、お客さんも含めて見ていくうちに世界ができていく。映画を見るような感じです。素晴らしいことですよ。

20年後の自分たち。  


梨乃

20年後、どういう自分が浮かんできます?

達也

俺はね、本当に映画を創りたいなって思ってて、実際に来年くらいにでもやろうと思ってるんだよね。

梨乃

監督?プロデューサーとして?

達也

いろいろひっくるめて全部かな。

梨乃

へぇ〜。ナイスナイス。

私はエンターテイメントをもとにもっと活躍の場を広げ、いい仲間と一緒に夢のあるのを創れていたら最高です。幸せで、愛する人々、自然、動物とともに人生を歩みたい。

達也

自分はダンスが大好きで、ダンスに魅了された人間だから、みんなも魅了されるはずだと思ってるんですよ。

僕は、ダンスで生きていきたい。でも、今の時代がダンサーの環境としていいのかというと、なかなかそうとはいえない。日本ではなかなか食べてはいけない。

ダンスはすごくおもしろいのに、わからない人もいっぱいいるから、それを何とか伝えられるようになればいいなと思って。ASTERISKがそのきっかけになればいいなと思ってます。

だから、20年後に、もっとダンサーがいい環境で踊れて、ダンスの舞台もたくさんあって、いろんな人が観にいく。それが夢があっていいなと思うし、それを目指したいなと思います。

interview & photo by AKIKO
'13/05/16 UPDATE
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