TDM Special Interview
〜映画『RIZE-ライズ-』出演・クランパーLil C(リルシー)〜 |
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■映画の中でのシーンで、海に向かって踊っている場面がありますが、その時の感情はどのようなものでしたか?
L
そのシーンは、感情自体はあんまり覚えていないんだけど、踊ってる時って、いろんな感情が入り混じっていて、それらの感情が、身体からほとばしるような状態なんだ。日常で起こる様々な問題が、どうすることもできない怒りを、いかに中和させ、クリエイティブなものに変換し、表現するか、っていう作業になるんだ。ネガティブなモノをポジティブなモノに換えて、出すっていう…。
――内に秘める強さと弱さ、そういう人間性を感じましたよ。
そういう風に感じてくれて嬉しいよ。この映画のキャスト達のダンスも、全てエネルギッシュでパワーがあるって言われるけど、そこには、当然日頃のストレスとか、人間だからこそある“弱さ”があって、その弱さがあるからこそ、それを乗り越えるために踊ってるんだ。そういう感情を分かって貰えて嬉しいよ。 |
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■サウスセントラルやLAのダンスシーンはどんな感じですか?
L
僕らの住んでいる地域にはCLOWN(クラウン)とKRUMPだけで、それ自体が、この地域のダンスカルチャーになってるよ。特に、僕が住んでいる地域は、KRUMPの方が多いんだ。幅広くないし、かなり狭まったダンスシーンだよね。それに比べて、LAのハリウッドにはあらゆるスタイルのダンスが盛んだから、ダンサーになりたい奴はLAに行ってる。アメリカの各州に、それぞれのダンスのスタイルがあるって言っても良いくらい違うね。シカゴじゃ、フットワークを中心とした兆速のステップが特徴で、あの足の動きはヤバイ。ベイエリアでは今、“ハイフィー”っていう新しいダンスが産まれつつあるらしいよ。スペルは分からないんだけど…。コミカルで少しアニメっぽい動きみたいで、それが流行ってる。でも、KRUMPって、ダンスのスタイルじゃなくてライフスタイルそのものなんだ。生きるために食べる、それと同じことなんだよね。そういう背景のあるダンスは、単なる流行りにはならないと思うな。 |
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■日本でも『流行りではなく、ちゃんとしたジャンルになるのでは?』っていう意見も出ています。ただ、日本の環境と、サウスセントラルの背景が違い過ぎて、日本人ダンサーが、KRUMPER(クランパー)になることは難しいと考えています。そして、その生活を知れば知るほど、本来のKRUMPという踊りを実践することは、できないと感じてしまいます。それでも、そういう“踊り方”、“動き”が、KRUMPというスタイルとして日本に伝わることはどう思いますか?
L
現在日本では、ヒップホップやハウス等、いろんなダンスのジャンルが定着してるから、KRUMPも新しいジャンルとして、理解してもらえると思う。ただ、KRUMPを踊る状態、その背景を理解してもらって、踊って欲しいな。こっちでもあのエネルギーを発散できない人もいるんだよ。あれはダンスというよりは“言葉”みたいなものだからね。
でも、日本人はすごく勉強熱心で、与えられたものを、いつもベストな状態にもっていきたい気持ちがあるから、KRUMPも良い形で定着するんじゃないかと思う。僕たちの背景を、日本のダンサーが生きて体験することはできないから、KRUMPを教えることはすごく難しいんだ。“動き”を教えることはできても、そこにある、苦しみや葛藤の精神を教えることはできないからね。
でも、スタイルとして継承されることはいいことだと思うよ。基本的には、多くの人にKRUMPを知って欲しいっていう気持ちなんだ。こんな小さな町で生まれたKRUMPが、これだけみんなに影響を与え、国境を越えて伝わるっていうことが嬉しいよ。本当のダンサーであれば、僕の伝えたい気持ちが分かってもらえると思うんだ。 |
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■最後に日本のダンサーに一言お願いします!
L
『何を感じて生きているか?』を意識して、正しいと思ったことをやる。そういう気持ちでこれからもずっと踊り続けて欲しい。そういう情念をガソリン(=原動力)にして「RIZE(=這い上がる/のし上がる)」して欲しいと思っているよ。それはダンスに限らず、音楽や自分が良いと思ったものならなんでもいいと思うんだ。それに対して恐れず立ち向かっていって欲しいよ。 |
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Interview by AKIKO |
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Update:06/01/12 |
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