TDM - トウキョウダンスマガジン

TDM SPECIAL
ダンススタジオ「S.I ART WAVE PLANT」発表会 2006
「LOVE PINK WORLD」
TDM Interview : 照明 株式会社 共立 笠井泰三氏
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ダンスとそれ以外の舞台との違い
 

笠井今年も去年からお付き合いで、再びSIさんの発表会を担当することになりました。それまで芝居などの舞台照明をやっていましたが、初めてダンスだけの舞台を担当したのは5年くらい前からです。あの頃は色々と苦しい思いをしました。

僕の個人的な考えですが、ダンスの照明は振付さんの主観と自分の主観をすり合わせていいものを作るのが前提。そして照明には「いい・悪い」の基準がなく、感覚的なものなので、僕がいいと思っても振付さんが違うと言ったら違うんです。当初の知識がない頃はずっとそういったすれ違いばかりでした。

いろんな現場を経験して来ましたが、ダンスが一番難しいと思います。1曲という尺の中で、シーンの展開が多いですから。さらに、ダンスの中でも、「発表会」となると1曲1曲の振付の方、つまり1曲1曲の演出家さんたちと作っていかなくてはならないので、大変です。それぞれの演出の皆さんが全体を把握できていればいいのですが、それもなかなか上手くいきません。

よくある問題として、前後の曲の終わりと始まりの照明が似てしまうケースがあります。でも、ここが照明のプロとしての腕の見せ所です。同じ赤でもそこに紫を混ぜたり、縦からではなく横からの光にしたり、そうした印象の違いをつけて、見ているお客さんを飽きさせないようにします。

やっぱり振付さんの照明案はカッコいい
 

照明案はダンサーさんによって具体的なものもあれば、そうではないものもあるので、まずは音を聞かせていただいて、僕なりの感覚で一通りのたたき台を作ります。あくまで僕なりのイメージで色をつけます。あとは、お稽古を見させていただいて直すのですが、実際の振付や立ち位置を見ると、僕が思っていたイメージと全然違ったりします。激しい音なので「ビカビカ」やると思ったら、そこには一人だけで、サス※一本でいいと言われたり、やはりピン※でいこうとか。

僕の体験上、振付の方の言う通りの照明にすると、やっぱりカッコいいですね。僕も驚かされます。僕が一度たたきで出すものは可もなく不可もない、普通な感じなんですが、振付の方の案でやってみると、なるほど、やっぱりいいなって思いますね。勉強させられます。

※サス(SUS):サスペンションライト(Suspention Light)の略。Suspensionは「ぶらさげる」という意味で、“サスバトン”と呼ばれるコンセントが付いていて、普段は照明のないバトンにぶらさげて使用する。舞台客席側から「1サス、2サス、3サス」と数えるらしい。

※ピン(PIN):ピンスポットライト(PIN Spot Light)の略。照明調整室と呼ばれる部屋または、専用の部屋に置かれ、演技者をフォローする為のスポットライト。

照明を始めたきっかけ
 

照明は20歳から始めて今、18年間携わっています。それまでは音楽にしか興味がなくて、ある野外コンサートに行った時に、コンサート会場の真ん中で仕事してる人を見て、「あの人になりたい」と思ったんです。いわゆるミキサーですね。それから専門学校に音響専攻で入りました。でも、全く音響などの知識がなかったので、落ちこぼれました。もう学校を辞めようか、辞めないかと思っていた時に、必修科目で照明の授業があったんです。それでなぜだかその先生とウマが合いまして、仲良くなったのが始まりですね。照明という職業を知ったのもその時でした。音響より簡単だって思って始めたのが最初です。

今では、照明という仕事は高校生でも知っている人が増えました。特に女性。ちゃんと「照明になりたい」っていう希望を持って入社してくる人が増えてます。でもどの分野の世界もそうだと思いますが、理想と現実のギャップを感じて辞める人も多いです。

ライティングの本場・アメリカでの分業スタイル

 

照明の本場はアメリカで、分業制です。一番上に“照明案を作るデザイナー”がいて、“色を作る人間”、“現場で仕込む人間”などに分けられます。デザイナー本人が現場で仕込むことはほとんどありません。有名な人になると、ミュージシャンと一緒に扱われたり、クルーとして大きくクレジットされたりします。実際に現場で仕込むのは、その部下たちですが、彼らはいわゆるセッティングのプロになります。本番中は撤収まで体を休めることができるという利点があり、各人の才能が活かせるし、効率よく休められれば現場での事故やケガも減ります。しかし日本はまだ全部自分たちでやっています。最近日本でもそうした団体がいるそうですが、いまだに下積みが長く、何度も同じ作業の繰り返しです。でもいずれ日本もアメリカのようになると思いますよ。

照明と演出の上手くつき合うコツ

 

ダンスのプロの方であれば、照明にこだわって当然だと思いますし、どんどん細かくなるのもわかります。そして、その中で「このタイミングでこの光をここに当ててほしい!」というような、絶対に外したくないポイントが1曲の中でおそらく何ヶ所かあると思います。まずはそれを照明に優先的に伝えるのがいいと思います。逆にこちらも明かりのプロなので、ユニゾンなどは大抵かっこよくなるように作っているつもりですし、その辺りは信用してもらって(笑)、あまりその辺にとらわれずに進めてもらえるといいと思います。でも、絶対的なポイントばっかりになると、さすがに困ってしまいますけども…何せ人間が手でやっているものなので(笑)。

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'06/09/22 UPDATE
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