TDM - トウキョウダンスマガジン

TDM Special Interview YOU-KI
ロスで出会った自分に必要なもの
 

ロスに来た目的は、今までにやったことないことで、自分の中に感じる可能性を引き延ばすのと、今までやろうとしたけどできなかった自分に対するしわ寄せの部分を埋めるため。でも、日本にいたら毎日仕事をしてしまう。あと、ロスは車社会だから、1人になれる時間が多い。色々考えられるから、1人が好きな自分には合った。

you-kiロスに来ていろんなレッスンを受けてみたんだけど、ヒップホップ系のレッスンに関しては自分に合わなかったんだよね。でも、ロスに来て1ヶ月経っていいなって思ったレッスンがあったよ。それがMALAYA(マレイヤ)※っていう人のレッスン。リリカルなテクニックジャズで、難しくて、クロスフロアさえ全然できないけど、でもすごく好きなんだ。レッスンというか、彼女の人間性が。

踊りって、ジャンルが色々あって、人によってフィーリングが違うでしょ。そういう人間性も関係ある気がする。俺の場合“OZさんのポップ”だったから、はまったし。マレイヤも同じで、自分とは全くタイプは違うんだけど、そういうフィーリングだから入り込めるんだと思う。

彼女に「バレエもした方がいいよ」っていわれて、バレエも習ってるよ。スロウを踊りたいとか、バレリーナになりたいわけじゃないけど、自分に必要なもの、足りないものだと思ったんだ。

※MALAYA:ロスで有名なジャズダンサーの1人。

自分とダンスの位置関係
 

オレの考えだとダンサーには、「一つのことに長けている職人ダンサー」と、「いろんなことを自分なりに表現できるダンサー」の2種類いると思うんだよね。俺は一つのジャンルをやり通すことはできなかった。でも、自分の強みは何でも自分の踊りにすることができること、って気がしたんだよね。

今の自分の現状で、自分のやりたいことがナチュラルに選択されてきたかも。踊りに関していうと、バレエやテクニカルなジャズとかが必要だと思ったのと、トレーニングの勉強、これが2本の軸になった。英語はもまれながらやるしかない。でも結局「この2本だな」って、自分の中でしっかりと認識したのはここ最近。今まではただ好きだったからやっていただけだけど、今はそれをどういう形にしていって、自分はどういうのが表現できるのか?踊りでもトレーニングでもどういう風に出していけるのか?の方法を考えていきたい。それが、直接的な仕事として見えているわけではないんだけどね。

でも、今までやろうとしてもダメだったこともいっぱいあって、真っ直ぐダンスにたどり着いたわけじゃなかった。南米のペルーに住んでた時に、楽器をやったけど続けられなかったし、ピアノも弾きたいと思ったけど、続けられなかった。格闘技も興味あったけど、テコンドーも続けられなかった。自然な流れのように見えるけど、いろいろ自分に合うものを模索して、結局ダンスに行き着いたんだ。

YOU-KIの信念…「人は皆違う」
 

俺がすごく思うのは「人は皆違う」っていうこと。物事には当たり前のことはなくて、その人の遺伝子や育ってきた環境によって人の解釈は左右される。それを普段からわかってると、何でも許せるようになる。責任は物事には一切なくて、人間の中にあるから、物事や周囲に拘束される必要はないんだよね。どういう風な生き方をしてる人にも批判しないけど、迷惑はかけたくないし、かけないでほしい(笑)。その人の勝手だけど、他の人とはやりかたは違うんだしね。

人に対して怒る時って「相手のためを思う時」と、「自分の器量に負ける時」とあると思う。怒る必要がないのに怒る人は自分に負けてる人だと思うのね。自分の器量が少なくて、我慢ができなくなる自分に対しての怒りを相手に伝えるのって相手には関係ないんだよね。自分にもそういう時があったよ。

精神の転換期に踊り始めた…自分は踊りで良かった。
 

you-ki今のオレはゆっくりしてるとか、プラス思考だってよくいわれるのね。でもこれはたぶん昔の反動で、小さい頃は全く逆で、短気だった。でもいつしか自分の中でそれを解決する方法を見つけた。だから今みたいになったし、どうしたらそういう風にできるか説明もできる。

変われたのは人の影響も受けてると思うけど、本かな。オレ、大学時代、一切勉強してないのね(笑)。だけど心理の本が実家に山ほどあって、それを読むのが大好きだった。何かの名言集を読んだ時に、それまで自分が思ってたことで口に出さなかったことがいっぱい書かれたんだよね。その時「あ、俺の思ってたことは合ってたんだ」ってつながった瞬間があった。

もし自分のダンスの生徒で、同じ感覚の子がいたら、踊りを教えることよりも、そういう人間的な部分をよくしたいって思うかも。もし良くなれば、絶対踊りも良くなるし。何かに打ちこめることがあると、自信につながるし、強くなれるから。

元々、そういう人の考え方や感じ方に対して興味があるんだよね。何かがあったから劣等感を感じるとか、何事にも必ず原因がある。そういうのって気になる。そういう風にしなければもっと楽に生きれるし、そういう風に導いてあげたくなっちゃう気がする。それで自分も克服してきたことや、楽になった部分がいっぱいあるし、それで生きるのが楽しくなった。

そういう精神的な転換期と、踊り始めた時期が一緒だったから、自分はそういう風に考えられるようになったのかなって錯覚したところはある。踊りじゃなくてもそうだったのかもしれないけどね。でも自分は踊りで良かった。

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'06/09/01 UPDATE
Interviewer AKIKO


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