TDM - トウキョウダンスマガジン

MIKIKO 〜イレブンプレイ“dot.”発信後記〜
MIKIKO 〜イレブンプレイ“dot.”発信後記〜
2011年11月に行われた演出振付家MIKIKOTomomi Yoshimura率いるダンスカンパニー『イレブンプレイ』によるダンスインスタレーション“dot.”。音響・照明・映像・テクニカルの分野において日本を代表するクリエイター陣が参加し、ダンスとクリエイティブでプロフェッショナルな才能が化学反応を起こすという、新時代への先駆けになったのではないだろうか。表現者としてプロフェッショナルと良いものを創ろうという同じスタートラインに立てることは、今後のダンスシーンの可能性を更に広げてくれる。

今回その大業を成し遂げたMIKIKOがTDMの取材に再び応じてくれた。変化し続けるストリートダンスシーンの中で、軸をブラさず歩み続ける彼女の生き様と想いを綴ったインタビュー。

MIKIKO 〜イレブンプレイ“dot.”発信後記〜

がむしゃらにこだわってきたものが薄まってきそうな恐怖。  

TDM

まず、カンパニー立上げのきっかけから教えてください。

MIKIKO

立上げたのは2年前になります。 ニューヨークから帰ってきてすぐに トウキョウダンスマガジンさんにインタビューしてもらいましたよね。

Perfumeが思った以上に売れていて驚いたっていう話をしたと思いますが、あの取材後もその影響で、NYにいた頃に想像していたところと違うところに自分の需要があったという感じでした。

今は、ストリートダンスのアンダーグラウンドのシーンからは離れた世界でやっていることになっているんですけど、この1年くらい、CMとかミュージックビデオやライブ、舞台などいろいろなジャンルの仕事をさせてもらいましたがビックリするほど早いスピードで時間が流れて行って、自分が広島にいた頃に、がむしゃらにこだわってきたものが薄まってきそうで怖くなってきたんです。

自分が何を目的にニューヨークへ行ったのか、どうして東京に出てきたのか…整理する暇もなく忙しくなってしまった…もちろん、それはありがたいことなんですけど。私はいわゆるタレント振付師になりたいわけじゃないし、振付師として有名になりたくてはじめたわけでもない。

自分が自分に対して思っているイメージと周りが自分に対して思っているイメージが違うのかもしれなという恐怖も正直ありました。

TDM

MIKIKOちゃんを昔から知っていればわかるけど、 新しく出会う人や若い子は違うイメージを持っているかもしれないですね。

MIKIKO

まずありがたいことに「あのPerfumeの振付師」って説明で誰もがわかってくれるようになって、 でも実は、それまでの10年間は全然違うところにあって、 アンダーグラウンドにこだわってやっていたし、 だからこそ、自分はメジャーな仕事をやっても大丈夫、 ブレないぞっていう自信がありました。

いざアンダーグラウンドから離れて、Perfume以外のメジャーな仕事がメインになってくると、気をつけてはいるけれど、そこが薄れてしまう恐怖があって、それじゃイカンぞ と思いました。 かといって、教えることはもう辞めようと広島で決めたっていう頑固なところがあったので、はじめは自分が東京でレッスンをメインでやるつもりもなかったんです。

MIKIKO 〜イレブンプレイ“dot.”発信後記〜

今ダンスをやっている若い子たちは迷うだろうな。


MIKIKO

自分の創る制作場所、自分の居場所もないし、 自分の思いや動きを体現してくれる人もいないから、 その孤独感がすごくありました。

それで、時間がかかるかもしれないけど、 自分の居場所を作らなきゃいけないなと思って、 まず頑張ってスタジオを作りました。

その後、場所はできたので次は仲間だぞ、と思って 広島から東京に出て来ていた子たちもいるし、 自分が東京での一年間でいいなと思っていた子たち、 あとは、事務所に所属していたんだけど、契約が切れてフリーで女優をやっていた子など、とにかく、良いなと思う部分があって、人間的にも信頼できる子に声をかけました。

特に広島の子たちには申し訳ないくらい突然広島での仕事を辞めたので、 その子たちに対しての、責任もずっと感じていました。 「もう一度カンパニーを作ることに対して躊躇していた部分もあったけど、たぶん今やらなくちゃいけないと思ってやります。 だから、中途半端なことはできないので、とにかく、キツイことも言うだろうけど、自分は全身全霊でやるので、ついて来てくれませんか?」 という感じで一人一人に会って話していきました。

広島の時は、一つのスタジオしかなかったから、 みんなが通う場所はそこしかないし、ある意味ブレない。 頻繁に誰かが教えに来てくれるわけでもないし、 ダンサーとしての仕事も少ないから、 すごく貪欲に技術を鍛えたり、ブラックカルチャーを知ることだったり、 新しいミュージックビデオに対する食い付き方が良かったです。

だけど、東京のダンス界にいると、それが薄い。 ちょっと見た目が可愛ければ仕事があったりする現実がなくもない。 それに、何が目的でダンスをやっているのかが薄れてしまう現状があって、昨今のダンスブームも相まって 「あなたがインストラクターでいいの?」みたいな人が インストラクターで忙しかったりするような違和感がなんとなくありました。先輩たちが築き上げてきたダンスシーンが薄れていってる気がすごくしていて・・・。昔は、売れているダンサーは確実にすべてがかっこよかったから。NYから戻って来たときは、それを如実に感じました。

結局ダンスで食べられているか、食べられてないのかは関係ないんですけど、その基準が曖昧すぎて、今ダンスをやっている若い子たちは迷うだろうなーと思います。

そうじゃないところで、きちんと地に足をつけてやらなきゃいけないのかなと思ったところからはじまりました。

メンバーは最年少は22歳なんですけど、30〜31歳もいるし、 27〜28歳の子が多くて、たぶんまだまだ燃えたいんだけど年齢や将来のことも考える年頃。 でも、かといって、きちんと自分が何かをするというよりは、 もうちょっとプレイヤーとして一花咲かせたいっていう世代。 ちょうど迷う年頃で、私たちがダンスシーンで感じなかった悩みもあるんだろうなーと思います。

私たちが良いと思っていたダンサーの仲間や先輩たちは技術も個性も両方ありましたから。

そういう教えられて身につくものではない玄人さみたいなのがどうしたら身に付くのだろうねと、トモちゃんと日々模索しています。 やっぱり伝えていきたいですからね。

MIKIKO 〜イレブンプレイ“dot.”発信後記〜

見たことがないものを創りたい。

MIKIKO

週2回のカンパニーレッスンでは、フリースタイルだけの日を作りつつ、 テクニック、振付をしっかりと訓練しています。

今回「dot.」は、イレブンプレイというカンパニーの代表作になるような作品になると思うから、ダンサーとしてだけではなく、表現者として それこそ (原田)薫さんが舞台で俳優さんと肩を並べて演じて魅了しているように、どの土俵の人が観ても、アマチュアっぽくない、表現者としての団体に見えるように精神的にも肉体的にも鍛えていきましょう、というところからはじまっています。

あとは、とにかく人数が多いので、発表会っぽく見えるのが一番怖い。 それだけは避けたいから、一人一人に目がいくようにという話をしつつ。 最初に私とトモちゃんで決めた今回のテーマと、 曲と、キャスト表を配って、説明をしました。

メンバーからすると、どこかに映像が入るっていうのは想像でしかないから、最初の1〜2ヶ月はすごいスピードで振りが付いていくけど、 これは一体どうなっていくんだろうと不安だったと思います。

TDM

振付に関してはMIKIKOちゃんとトモちゃんのみですか?

MIKIKO

はい。基本は週3回のリハを3ヶ月やって、 直前はもっと集まりましたね。

TDM

何の解釈も先入観もなく今回の「dot.」を観させてもらって、 ああいう作品を創るときの説明って難しいんだろうなって思ったんですが、 2人が決めた今回のテーマはどういうものだったんですか?

MIKIKO

ダンスの舞台でもないし、ショウケースでもないし、 ダンス・インスタレーションという名前にしたのは、 空間というか空気を観に来てもらいたかったからです。

ダンサー側からメッセージを発することは、もちろんしなきゃいけないんですけど、 わかりやすいように押し付けるのではなく、観る側がどう感じるか解釈はお任せするっていう見せ方もあっていいんじゃないかなと。

それは今回自分の作品を創ることになったときに、 自分たちがお客さんに迎合して説明し過ぎたり、 ダンサーの押し付けがましいテンションで『見せつける』みたいな演出はお客さんに失礼だ!と思い、自分たちの作品だから、正直に素直に作ろう、と最初にトモちゃんと話しました。

わかりにくくてもいいし、 「なんか意味がわからなかったね」 って言われてもいいから『いま感じること』全力で伝えようと思っていました。

だから、自分たちも最初に「どういうものですか?」 と聞かれたら説明しにくいけど、とにかく、 「見たことがないものを創りたいです」と正直に答えていましたね。


MIKIKO 〜イレブンプレイ“dot.”発信後記〜

1ヶ月前に振付完成後、テクニカルアイデアとダンスの調整作業。

TDM

個人的な印象なんですが、キーワードになっている「dot.」というものと、 空間の電気、照明、iPadなどの光を放つものと肉体のバランスが印象的でした。 普通の舞台照明、いわゆる振付側が照明プランを出して、 一つ一つ指示をしていく提案の仕方ではなくて、 そこから、コラボレーションしていたのかなというか。

MIKIKO

はい、照明デザインは完全にお任せです。

もちろん「ここはフューチャーしてほしいです!」という箇所だけは言っていて、 あとはDumb Typeの藤本さんがこの作品をどう捉えるんだろう、 そこを楽しみたかったのもあります。

1ヶ月前に通しのビデオを先方に送って、向こうに考えてもらったんです。 テクニカルチームからはキューブを光らせたり、 ソロでソンちゃんが踊った作品で、キネクトを使って床面に映像で軌跡が残る技術も、ビデオを見せて、「何ができますか?」っていう話から出てきたアイデアなんです。

TDM

なるほど。提案したものに対する、アクションだったと?

MIKIKO

映像に対しては、流れをこちらが決めていたので、 こういう映像を作ってくださいという具体的な発注が多かったんですけど、それ以外の部分に関しては、 「このダンスで何ができるか?」っていうコラボレーションが強かったです。

TDM

作品ができた時点での提案ですよね。タイムラインがすごい。

MIKIKO

だから、1ヶ月前には全部振付ができていて、 そこからは通しの毎日だったからダンサーにとってはこんなに時間をかけて作ったことないですって感じかもしれないですね(笑)。 けど、どんな面白いアイデアがテクニカルチームから出て来るかわからないから、ダンサー側で修正できるようにスタンバイしていました。

TDM

そうですよね。 こっちもお任せするところから調整が入るわけだから、 自分の中でイメージしたものを伝えるのではなくて、 自分が創ったものに対して調整していく作業ですもんね。 そうじゃないとできないよねっていう作品でした。

照明の指示の出し方にしろ、どういう説明だったら、ああなるのかな、 コミュニケーションを、どうとっているのかなと思って 観ていたんですけど・・・そうか。 1ヶ月前にあの画を見せられていたらできますね。

逆に、そういうコミュニケーションの中で、 思ったものと違ったことはありましたか?

MIKIKO

照明に関しては、思ったのと違ったのはもちろんあって、 でも、それはそれで、「こう捉えるんだ〜」っていう感じで新鮮でした。

トモちゃんと「へ〜、藤本さんってあの曲をピンクにするんだ〜」 っていうところで楽しんでいましたね(笑)。

どうしても違ったところは、2〜3ヶ所伝えたけれども、 ほぼなかったですね。

センス・イメージ・デザイン。


TDM

懐中電灯と脚立を使っていたナンバーはどんな流れだったのですか?

MIKIKO

あれは、「光と影」っていうテーマを決めていて、 本当は映像のシルエットを出そうかって言っていたのですけど、 作るのも大変だし、それこそ、この間ビヨンセがショーでやっていたようなプロジェクションマッピングをやるのは今回は違うと思っていたし、 見たことあるしねって話していました。

映像の案が浮かぶかもしれないと思って、懐中電灯で創りはじめてみたら、 「これだけでおもしろいね」ってことになり、あれだけになりました。 結果、照明もテクニカルも何もない作品になりましたね。

TDM

個人的にはシンプルで好きでしたね。 床に映し出された四つのマス目の中で踊るナンバーも印象的でしたが・・・。

MIKIKO

MIKIKOあれは、「決められた世界の中で」っていうタイトル。 それぞれの作品には私とトモちゃんが好きそうな 訳の解らないタイトルが付いています(笑)。

TDM

今回プログラムが存在しなかったけど、 自分たちの中ではそれぞれのタイトルが付いているんですね。

MIKIKO

LEDライトの入ったキューブを使ったナンバーは 「閉鎖された世界の中で」。 そういうタイトルもそうですけど、出演したダンサーにわかりやすいように、ト書きも用意してあります。

フランス語で話していたシーンも、 女の子たちが「脱げた?」「脱げないね。」 「早く脱げればいいのにね。」「わかってないね、脱げれば楽なのにね。」 というような簡単な日本語のセリフがあります。 脱皮=成長みたいなことをワンピースを通して比喩していたのですが、2人の女の子が一時間を通して覗き穴を覗いてる というのは、はじめからイメージがありましたけど、 それを英語にするのか、日本語にするのか、 口パクなのか、音に合わせるのかは、ギリギリまで見つからなかったですね。

TDM

詩に合わせて2人の女の子が踊っていた作品も印象に残っています。 言葉で踊る色気というか、断片的にいろいろ気になる要素が目に入ってきたんですが、少しマニアックな視点なのかと思ったりもしました。

MIKIKO

あれはポエトリーの言葉のみに合わせて振付をしたのですが、私の中で言葉を音楽として捉えるというテーマで創りました。なかなか痺れる作業でしたが、はじめて感じる空気感が生まれて、新境地でしたね。

TDM

今回の舞台は、いわゆる、鮮やかで、派手な、「わー!」「キャー!」っていうものではない。 どちらかといえば「ほぅ。」「へぇ。」みたいな、イメージ。

すごくわかりやすい空間の見せ方をしつつも、 照明や映像の方もいろいろ凝ったことをしているので、 人によってはそっちに気を取られるかもしれないなというのも 印象としてあって、プラス、全体的なイメージでいうと、 「センス」「イメージ」「デザイン」といった要素が、 今まで見てきたMIKIKOちゃんが常に持ち続けている、 変わらない良いところだなっていう感覚と融合されたという強い印象でした。

MIKIKO

たぶん、私やトモちゃんの感覚が6で、照明などテクニカルなものが4。 お客さんも、テクニカルなものや、アートが好きな人が4くらいで、 ダンサー目線というか、ダンスシーンを知っている人が6、 またはもっと少ないかもしれないけど、 そんな割合だったと思うので、いろんな感想があったんだと思います。

TDM

確かに。会場に行ったときに 「この人たち、どこのジャンルの人なんだろう?」 という印象はあったかも(笑)。

心強きクリエイター陣のサポート。


TDM

今回の選曲をするときに何か意識したことはありますか?

MIKIKO

ヒップホップとかR&Bとかは、昔よく聞いていたんですけど、 今の流行とか全然わからないから、あまり聞いてなくて、 あとは、歌詞にあまり引っ張られないような音でやりたいと思ったので、 わりとインストもの絞りこみました。大度さんはその辺の音楽にも詳しいので、彼に集めてもらった中から選んだ感じですね。

TDM

そこでも、コラボレーションしてるんですね。 オリジナルはなかったんでしたっけ?

MIKIKO

オリジナルは二曲くらいで、あとは既存の曲です。

TDM

ある程度ビートのあるハウスチックな音が多かったので、 全編オリジナルで作ったのかなと思ったんですが。

MIKIKO

本当はオリジナルで全部やりたくって、 でも、ダンスを創るときに音が先にないといけないから、 先にメインの作品からどんどん作品を創っていって、 それで、選んだ曲たちを音楽担当のKSKさんに送って、 結構忠実に作ってもらったんですけど、 やっぱり原曲の音でダンサー側が慣れちゃっていたので、 ほとんど原曲のまま使いました。

ただ、全曲にオリジナルの音はあるので、 DVDなどになるときに差替えて使いたいと思います。

だから、今回勉強になったのは、先にオリジナルの音でやっていて、 あとで差替えるのは身体的に気持ち悪いから、 5ヶ月くらい前から音を作っていかないと無理だねと。 今回も結構余裕を持って創ったつもりが、それでも足らなかったから。

TDM

やっぱ音は、大変ですよね。 この制作チームは、MIKIKOちゃん的にイイなと思った人たちに声をかけた感じですか?

MIKIKO

そう。プラス「いや、タダでもいいから面白いもの作りたい」って熱い気持ちで作っている人。

TDM

どういう魅力のある人たちですか?

MIKIKO

MIKIKO照明のDumb Typeの藤本さんは、憧れの人(笑)。 本当に、声をかけた自分がびっくりしています。

他の方は、この間、東京ドームでPerfumeのライブを手伝ってもらったチームです。 みんな、世界的に日本代表みたいな人たち。 真鍋大度さん、石橋素さん、比嘉了さんはメディアアート界のスターです。

関和亮さんは、Perfumeのミュージックビデオを いつも作っていただいている映像ディレクターの方で、 私の好みを知ってくれているし、 「やろうやろう!」って感じの人。でも売れっ子で超忙しい方なんですよ。 だけど二つ返事で引き受けてくれました(笑)。

音楽のKSKさんもめちゃくちゃ才能のある方で、今回本当に助けられました。

だから、今回の公演では この制作チームが何をするのかを見に来た人もいると思います。

そういう人たちがダンスとコラボレーションしたことが挑戦でした。 それを出演してくれた子たちの友達が見てくれたこと、それが挑戦だったのかなと。

私の中でも、すごく難しかったけど、 やりはじめめて良かったのかなと思います。

“すごさ”を伝える難しさ。


TDM

ライブスタッフのように、いろいろな現場を見ている人が、 ダンスシーンをどう彩るんだろう・・・それってすごく面白い。 そういうところからも含めて、「dot.」はいろいろな センスの融合作品だったっていう印象がありました。

そういった流れの準備期間を経て、やってみて、 思ったよりここは大変だったなってことはありますか?

MIKIKO

MIKIKO思ったより大変だったのは、iPadやLEDライトを使ったナンバーのために、無線を飛ばしていて、それはすごいことなんですけど、そのジャンルに長けてる人じゃないと、どれ位すごいことかってわからないじゃないですか。 わからない人はそれでもいいってテクニカルチームは思っているのですけど、 リアルタイムでそのすごさをきちんと感動してもらえるところまで持っていかないと、意味がないなと思っていました。 テクニカルの凄みみたいなことを知らない人にも、そのすごさを伝えたかったので、そこを理解して演出することが必要なんじゃないかなと思っていて、そこが思ったより大変でした。

TDM

あ〜、そこは難しいかも。

MIKIKO

でも、観に来た人たちはどれもこれもリアルタイムに見えたし、どれもこれも創り込んでいるように見えたって意見があったから、良かったなって思って。 映像は事前に撮影していたものとタイミングを合わせて出していたシーンもあったのですが、リアルタイムの映像にも見えたっていう感想を聞いて嬉しかったです。 その境目がわからないようにしたかったので。

TDM

どうやって仕込まれたかはわからないけど創り込んだと思っていました。

MIKIKO

観客が「どうやって仕込んだんだろう?」まで、 疑問に思ってもらえたらいいんですけど、 「どうやってるんだろう?」の考えにいく前に、 「あ、あれってそうだったんですか?」という意見も過去にはありました。

プラス、テクニカルすごさばかりに目を奪われてもれても、ダンスが活かされないので、そこがなくてもダンスだけで魅せられるまでに、作品だけで成立させなきゃいけないと思っていました。 そういった意味では、絶妙なバランスでコラボレーションできたのではないかな?と思います。

TDM

そっちに捕らわれたという感覚はなかったですね。 どちらかというと、「どうなってるのかな?」と不思議に思うけど、 現象は光って、消えたという画だけだから、演出ありきの流れだし。 そういう意味で、本当にすごい「dot.」でしたね。

残念なことに、前回のイレブンプレイを観に行けなかったのですが、 前回と今回の違いはありますか?

MIKIKO

前回は、『So many men,so many minds』というタイトルで、十人十色という意味なんですけど、一人ひとりを主人公に「TYPE 1 アリサ」みたいにして、それぞれに似合った曲を選んで、紹介をしていくオムニバスみたいな感じでした。

それで繋ぎをきれいにしていった創り方だったから、 今回よりも見やすいっちゃ見やすいけど、簡単でシンプルな感じでしたね。

別に、照明も現地の方だったし、レストランだから、音響も普通で、 クラブのショーに近い感じ。だけど、物語っぽく見えるから、 クラブのショーばかり観ていた子たちの感想は 「すごく新鮮で良かったです!」って感じでした。

それまでの一年間はみんなのトレーニングばかりだったので、 みんな成果を見せる場所として お披露目の場所が要るよねっていうことで、急遽決めてやったんです。

なので、前回のものはレセプションと呼んでいて、 「ここからはじまりますよ。」 「その、記念すべき第一回目が、“dot.”です。」 というのが、イレブプレイの流れです。

MIKIKO 〜イレブンプレイ“dot.”発信後記〜

振付の美学。個性と即興性。


TDM

今、MIKIKOちゃんがいいなと思ってるダンサーの子たちって、どういう要素を持った子たちですか?

MIKIKO

個性がある子。 ただ、その表現の仕方、出し方は結構みんなできるのに、 どんな曲でも、表情や見せ方がわりと同じ子が多い。 曲によって七変化できつつ、個性を持っていることもすごく魅力だと思います。

私は振付をするので、振付の美学みたいなものがあるから、 それをきちんと表現しつつ、個性を出してくれることと、 即興、フリースタイルができること。

TDM

振付の美学・・・??

MIKIKO

やっぱり、ある程度揃わないといけない、とは思ってるんですけど、 その中で、リズムを感じず、振りだけ覚えて踊る子もいるから、 そうじゃなくて、きちんと音を聞いて、このリズムで、 この音取りで、この体の流れでこの振りを創ってます、 っていうところまでわかって振付を踊ってくれる子。 いわゆる、振り覚えの早い子ではなく、 鏡に向かって見せるのが上手じゃなくて、 その音を表現する振付を踊ってくれる子。 そこが違うと、空気が動かないことがあるので。

TDM

そのメッセージ、いいですね。次の挑戦はありますか?

MIKIKO

次は今回の「dot.」の再演をしたくって、 やっぱり、本番までにできる限りのことはしたつもりだけど、終わった後に「あそこはああできた、あそこもああできた」っていうのが 結構自分の中であって、公演の終わった次の日もトモちゃんと 「あ、あそこ、ああすれば面白くなるね。」ってメールのやりとりしていました(笑)。

だから、はじまったけど、これが最終形ではないという感じがするので、 ベースはこれで、もう一回やりたくって、 あとは、日本だけじゃなくていろんなところに見せにいければ良いなと思います。

この世界はこの世界でやっぱり素敵だと思うので、 自分なりの表現で伝えていきたいなって思います。 まだどういう方法でできるかは手探りですが。

TDM

なるほど。それは目指すところですよね。 次の挑戦も、注目させていただきます。 今日はありがとうございました!
'12/01/17 UPDATE
interview by AKIKO
photo by Shizuo
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