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縡芭 巧 (コトバタクミ) 〜“立体感”の同時配信〜  
縡芭 巧 (コトバタクミ) 〜“立体感”の同時配信〜
大阪を拠点にエンターテイメントを考える男、縡芭 巧 (コトバタクミ) 、通称キム氏がTDMに初登場。ストリートダンサーとして毎度革新的な活動で話題を呼んでいる"WRECKING CREW ORCHESTRA (以下WCO) "のプロデューサーであり、ストリートダンスを始めとする様々なステージエンターテイメントに触れてきた彼が、創り手として今感じているダンスシーンへの想いを語ってくれた。今シーンに足りないものとは…。
縡芭 巧 (コトバタクミ)縡芭 巧 (コトバタクミ)

幼少の頃から映画などのエンターテインメントに魅了され、中学生時代に出逢った"ダンス甲子園"に衝撃を受けストリートダンスに没頭。"STYLE OF OLD SKOOL"というチームでOSAKA DANCE DELIGHT vol.12にて優勝。その後、かねてより興味のあった演劇の世界に身を置き、自らも役者として多数の作品に参加し舞台演出や脚本の書き方を学ぶ。台湾、韓国といった国際演劇フェスティバルを経験。国際的な活動で益々舞台芸術の拡張に興味を持つ。数々のパフォーマンスや演出、脚本執筆を経験し、アジア進出を機に、“WCO”の日本〜シンガポールといった前代未聞のアジアツアーを企画し、演出構成を担当・成功を収める。その後“YA-KYIM”の演出も担当。現在はドイツにて行われるBATTLE OF THE YEAR '07での“WCO”のゲストショーケース、2008年行われる“WCO”5周年アニバーサリーツアーや、“ID” (2003年WCO作品) の構成、演出を執筆中。あらゆるエンターテインメントに精通する若き演出家としてその生息域を拡張させている。

目標はオリンピックの開会式のプロデュース。 

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早速なんだけど、キム君の現状と今後の展望を簡単に教えてください。

縡芭 巧

遠い未来のやりたいことと、その為にやりたいなっていうことは別やねんけど、遠い未来にやりたいことは、オリンピックの開会式を (プロデュース) したい。それが、今の所の一番の目標。自分は今ダンスしてないけど、仲間とか先輩・後輩には、ダンサーとか音楽をやってる人がすごく多くて、そういう人たちと手を組んで、世界に僕らの持ってる“音楽感”とダンスの“エンターテイメント性の面白さ”を、世界同時配信で、多くの人に観てもらえる最後のチャンスが、たぶん次の東京オリンピック。それが僕らの世代の最後のチャンスやと思う。そこで魅せれると、切り開ける部分もあるやろうし、ストリートダンスって日本の外部から入ってきたものやねんけど、今は世界から見てもレベルが高い。その世界レベルのものを、ちゃんと国自体が誇れるようにしたいっていうのもあって、だからオリンピックでやりたい。「開会式のダンスパートとあのトリックと音楽が素晴らしかったよね!」って世界が手を叩いたら、日本の偉い人たちも自信を持って「そうなんです、日本人ってエンターテイメント作るの、こんなにうまいんです、実は!」って言えると思う。でも日本人って弱気やから、例えば、アミューズメントのことやったら、「ネームバリューのあるここに頼めば大丈夫」とか。海を渡って認められた実績のあることは素直に聞けるんやけど、どうしてもネームバリューとかに捕らわれがち。

子供たちを、日本で産んで育てたいなと思えるような、
もう少し自由な発想を認めてもらえるような国に近づけたい。

縡芭 巧

ちょっと根本的なところやけど、開発的なエンターテイメントが、日本はすごく遅れてる。要は、若い子たちにチャンスを与えられるような国にしたい。例えば、自分たちの子供たちがエンターテインメントを目指す事を思うと、やっぱり日本で産んで育てたいなと思えるような、もう少し自由な発想を認めてもらえるような国に近づけたい。それで、手っ取り早く、実績として残せるチャンスはそこ (=オリンピック) かなと思って。

それで、その為にも、今は派手な動きをするようにしてるかな。 (WCOの) アジアツアーをしてみたりとかね。海外での形跡を、今年と来年で残していこうかなと思って。アジアツアー回った日本人ダンサーなんて、はっきり言っておれへんから、それを打ち出すことで、「本気でやってるんですよ。人気もあるんですよ。」っていうことを、しっかりいろんな人に訴えかけていきたい。あとは、僕自体の演出論みたいなものも、各国に行った時は、そこの振付家の人とかと「どうなのよ、そっちは?」ってしゃべったりしてる。前に、日本での僕と全く同じ論法で振付をやっていた国があって、ダンス自体は完全に日本の方がうまいんやけど、すごく立体的にものを創る能力が高かった。面白かったから彼らとも手組んでやりたいねーって話したりして、どんどんネットワークが広がってきてる。今はいろいろ仕掛けていきたいと思う。…うん。“イベントがしたい”というよりも“仕掛けをしたい”のかも。新しい面白さ、遊びの部分でね。そこでぶつかる時もあるんだけど…。

お客さんの持ってる9割と創り手の持ってる1割で
ほぼ舞台が成立する。

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どういうところでぶつかるの?

縡芭 巧

例えば、照明って、普通はわかりやすくカウントの「ワン」の頭で入れるねんけど、それをアフターに出したり、じわっと入り込んだりするニュアンスで、音とは遅れて映像が入ってくるギャップのアプローチっていうか…。映画とかでよくやったりするんやけど、物を後ろから撮っといて、物越しに見えてきた情報で、物の影になってたものが見えてきた時には、こんなことがあったんだろうなっていう想像力を引き出す。僕の中での演出論なんやけど、お客さんの持ってる9割と僕ら創り手の持ってる1割でほぼ舞台が成立するっていうのがあって、でも、舞台上でお客さんへのアプローチを100説明して100理解してもらおうっていう人が多い。1から10まで言えばそりゃわかるけど、それは公演会でもせーへんことであって、お客さんが「自分やったらどうしよう」ってわざと考える隙を与えることも大事やったり。「え?なんでこんな時にこんなこと言ってるんやろ?」っていうギャップとかで、お客さんが舞台に参加して頭使ってくれへんと、はっきり言って興味がなくなったら頭に入ってこない。やりたいことの100%を100%やれば、出演者は満足。けど、お客さん的には、具だくさん過ぎて、面白いところもかき消し合ってたり、そういうニュアンスを本当はエンターテイメントで勝負している人たちがもう少し考えないと、ダメやねん。やりたいことだけ発信で「とりあえずウケたらいいやん」とかで終わってしまうものが、今、すごく多い。

よくケンカになるのは、「そうする意味がわからない」ってバンドとよりもダンサーとよくなる。ダンスをアプローチする為に、あえてダンスをちょっと側面においたりする時がある。“ダンスを、その音で、それを踊ってる、その素晴らしさを見てほしい”、では“ない”もの。例えば、何かに困ってる心情を、“そのシーンのダンスや表現の仕方でやって”って説明しても、なかなかわかってもらえないことがあって。でも、いざやってみた時に、他のメンバーが見て「おぉ、面白い!」ってなったら、話はどんどん進む。ただ、その実際に「やってみよか!」ってなるまでの段階で、今までは時間がすごくかかった。今は、新しい実験方法とか、今までやってきたことでみんな経験があるから、特にうちのメンバー (=WCO) とは揉め事なく進められてる。「あー、こいつが言うてることやってみたら面白いんやろな!」って思ってると思う。その代わり、面白くなかったら俺も「ごめん」って言うし、みんなもアイデアマンやから、「ほな、こうアプローチしたらええんちゃうの?」って、お互いが研究し合っていける。

お客さんに、何かを持って帰ってもらおうって考える時に、
単に“うまいダンス”だけじゃないやろって僕は思う。

縡芭 巧

今まで誰かまたは自分たちがやったことあることを、舞台っていう少し大げさな場所を借りて、フライヤーもクラブとは違うし、決まった時間に集まるっていう規定のあるところに来るお客さんに、何かを持って帰ってもらおうって考える時に、単に“うまいダンス”だけじゃないやろって僕は思うのね。日常でいつも大事に思ってることとか、悔しい思いをしてることとか、全部含めてのいい踊りのできるダンスとか。スポーツマンに対してはそういうのに理解が広いでしょ。テレビのドキュメントとかも多いし、「このためにすごく練習してます、こんな家庭環境の中で頑張ってます、怪我に立ち向かっています」みたいな。ダンサーも基本は一緒やねんけど、どうしてもチャラチャラしてるように見える。まぁ、実際あまり重く考えられすぎても受け付けにくいから、そのくらいが気楽でいいんかもしれんけど。お客さんに持って帰ってもらう感情を、こういう人たちが踊ってるのを見た時に、「明日から自分も頑張れるな!」っていうようなプラスの気持ちになれるところまで必ず持っていきたい。作品を創る時に僕がよく言う“立体感”っていうのはそこなのかな。

その時に誰かがやったことのあるものを、うまいダンサーがやって終わりっていうのは、誰かの上手な歌を上手に歌うカラオケみたいなもの。やっぱりカラオケで感動せーへんのは、「今思うこの気持ちと、この色と、この感触と、この温度は、こんな感じ!」っていう自分のセンサーを持ってる人たちではないから。そういう自分たちの感覚を伝える為の、トリックと仕込みをきちっと創りたい、っていうのはずっと昔から変わらない。日本人って「あ〜、こうやったらえーんやろ」って掴むんがうまいから、どうしても真似事になりがち。でもそうなってしまったら、感動が半減してしまう。「あー、これどっかで見たなー」って何かの作品の演出方法を、パロディとして何か別のものが生みだすんやったら賛成やけど、そのままやるのは反対派やね。

メンバーが、遊びながら、マルチな発想で作品を育ててくれる。

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今回のWCOにはどんな感じで関わってるの?

縡芭 巧

今回はね、構成と仲間の演出だけかな。「こっから入って、こっから抜けよう」、「ここで終わってとか、ここで照明切りましょう」とか。要は“タイミング”かな。今回はシーンが10個くらいあって、見やすく、飽きないようにする。ずーっとボワーッと始まってボワーッと終わるのが3回続くとお客さんも眠たくなるから。一人一人が映えるような照明の見え方とか、影のつけ方を切り替えてあげるとか。それぞれの持ってる踊りのアプローチや、持ってる音が全然違うから、それに見合う入り方と、こちらからのアプローチを考える。センターで踊った方がいいのか、端っこで踊った方がいいのか。基本的にソロは自由やねんけど、次に椅子を使うシーンやったとしたら、ソロの位置はその椅子と近い方がいいのか遠い方がいいのか、とか。ただ、本人たちがもう僕の趣味も知ってるし、僕も彼らの趣味を知ってるし、今回はWCOクルーのツアーやから、要は役作りの必要はなくて、本人たちのままでいい。やから、本人たちのやりたいカラーで大丈夫。「なーんかずれてて気持ち悪いなー」って思う時には、「そこもう少しずれへん?」って客観的に見てる人として、ちょっとだけつついてあげる。WCOクルーの今回のツアーに関しては、すべて俺が考えてこのネタをプロデュースして…ではないのよ。

ただ、ひとつ、一応彼らの舞台の中で僕が考案した「バウンス・ボール」っていうのがあって、“音の球”を誰かが拾ってきて、そこからビートが流れてて、耳に近づけると音が大きくなって、そこから「ブンッ」って踊りだす。最初は肩から入れてウェーブで通したり、投げ合ったり、蹴ったりする遊びを考えて作品を創ったのね。それが、結構お客さんの反応が良くて、今まで4つくらいバージョン創ってるんやけど、音に合わせて踊る、っていうのが、自分たちで音の出るタイミングをコントロールしている風に見えるのね。パントマイムと一緒のことやねん。うちのメンバーが遊びの中で、重い音の時は低くとったり、2つに割って小さい方でハイハット、大きい方でバス音に分けて2人組でとったりするようなマルチな発想で、作品を育ててくれる。今回のツアーでも「バウンス・ボール」はやるんやけど、ストーリーは全部YOKOI君が考えて、あとは初めて観る人も楽しめるように、立ち位置とか、みんなの目線を芝居臭くならんようにしたり、シチュエーションの調整を僕が担当したよ。

“よく見せる”というよりも、彼女たちの持ってる魅力を、お客さんに感じてもらえるようなコンディション作りが今回のメインやった。

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最近は「Girls Park 2007 meets au by KDDI」でYA-KYIMの演出に携わったとか。アーティストの演出という所で考えることはあった?

縡芭 巧

具体的には構成を考えてる。どの曲をどの順番で持ってきて、YA-KYIMはこんなイメージですよってわかってもらって、そこからこの曲でアプローチして、バラードやったらお客さんの耳から心に入ってくるようにとか。一般的に、歌って踊れるアーティストって、どうしても派手さとかで片付けられてしまって、歌詞の理解って結局そういう派手さで心をつかんだ後、CDで聞いて‥って流れになるでしょ。でも、シンガーって、思わず気に入ったフレーズや、その時の心情とか時代によって、体になじみやすいアプローチできた瞬間に、すごくこっちの感情を持っていかれることがある。それを一番いい形で、YA-KYIMを聞いてもらった時に、この子たちも聞いてるお客さんと同じようにいろいろ考えてて、恥ずかしくて言えないようなことも、歌にしたら言える、歌詞も自分たちで書いてるから、あの子たちの大事にしてるものがしっかりとお客さんと共有できたらなぁっていうのを今回はテーマにしてる。YA-KYIMの場合は曲順や振付を決めるといった部分を、普段は自分たちでやっているので、今回のように初めて演出家を起用した場合に、どんな感じなるか不安やったけど、初体験の事に対しても飲み込みが早くて、一緒に話し合いながら作り込んでいけたのがやりやすかったですね。単に騒いで「ワーッとできたらいいやん」っていう人もすごく多いし、もちろんそれもええねんけど、ただの動物園や水族館みたいな見せ物じゃなく、“ライブ”っていうところで、もう少し関係性を持たせたい。ただ、自分は1時間とか2時間の演出が得意なんやけど、今回は20分やったから、その限られた時間の中で、お客さんの気持ちをどう持っていって、どうすれば一番リラックスして聞いてもらえるかっていうのが、難しかったかもしれない。

Aの曲聞いてBの曲聞いた時に、絶対その中に相対性っていうものが生まれるから、それを逆の順番で聞いたらまたその感じ方も違う。僕自体が本を書くので、その言葉の順番と並び、その意味、使う回数、使う距離、距離っていうのは最初の方にいって最後でもいうのかとか、途中で出てきた言葉がずっと続くのかとか、そういうことをよく意識する。音楽のリズムやループも一緒で、耳に依存したものの、次に再生して呼び出してあげる時のタイミングで感じ方って変わる。そういうのを20分間の中でどう引き出そうかなって思った。歌の説明をして歌うだけだと、ちょっと気持ちが追いつかないことも多いから。基本的には“YA-KYIMがよく見えるように”っていうのはあんまり考えてなくて、“彼女たちの持ってる魅力の部分を、お客さんに感じてもらえるように”っていうお客さんのコンディション作りがメインやったかも。YA-KYIMに対しては、できることと持ってる魅力が良かった。思った以上に深いものもたくさん持っていて、若干20歳やのにたくさんいろんなもの持ってるから、いいなと思ったし、みんなにもそれを伝えたいと思った。こうやって仕事させてもらえるのも何かの縁やし、スタイリスト的な立場ではなくて、彼女たちのストーリーを通して感じてもらえるようにしたいなと。

ダンスで食べていける仕組みを作る人たちなのか、ダンスの可能性を広げる人なのか。そういう人たちがいないと、大阪は本当に職人だけの町になってしまう。

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キム君から見る大阪のダンスシーンは?

縡芭 巧

んとね、“職人の町”かな。ダンスっていうものの根本的なものが好きで、自分のライフスタイルっていうか、“自分=ダンス”ってくらい浸透してる人が多くて、生活する為にダンスとか、お金稼ぐ為にダンス、ではなく、“俺は俺として在るが為にダンスが不可欠”って人が今めちゃくちゃ増えた。だから、すごくいいことやねんけど、逆に、それができている間は、その人たちとその人の周りはいいけど、その人たちともうひとつの立場の人間が必要だよね。ダンスで食べていける仕組みを作る人たちなのか、ダンスの可能性を広げる人なのか。そういう人たちがいないと、本当に職人だけの町になってしまうから。

中華街にはおいしい中華があるから、たくさんの人が食べに行く。大阪にはすごいダンサーがいるから、レッスンを受けに行く。そういう人たちがいる間はいいし、もちろん教えること伝えることも大事なんやけど、僕の中ではもっとダンサーのアプローチの仕方として、もっと「表現」する方がもっと「楽しめる」のではないかなーと。今のスキルと感覚で、もっともっとうまくなりたいって思ってやってる感覚はすごく大事やと思うし、特に僕はそういう風に続けられへんかったから、逆にリスペクトできるんやけど、その人たちともっと手を組める人がもっと増えないと、広がってはいかないかなーと思ったね。

もっと、一固体としてのダンサーを見せられる場所を作れるプロデューサーが必要。

縡芭 巧

やっぱり発注された仕事で、その人とだけってなると、創るものに溝は増えるし、クリエィティブな仕事をしようとすると難しくなる。ダンス馬鹿が多いのよ、大阪は。でも、それが大阪の良い所。みんな上手やしダンス心から愛してる。その一方、簡易的なショーに出会うことも多い。ソロはめっちゃいいねん。けど、ルーティーンは必ず間違えますとか。できない約束をしてお客さんの前に出てるのはルール違反。ここからは極端な話になるけど、「ノーギャラやから」とか「ギャラ安いし」っていうのを理由に「ルーティーンをあまり練習してきませんでした」って言ってしまって、周りも「でもソロが良かったからチャラ!」ってなっちゃうのはとても残念な光景。「じゃぁ、いくらだったらルーティーンは覚えてもらえるの?」ってなっちゃいますよね。姑的なイヤミな言い方すると「あなたはソロはうまいけど、合わせをした時の気持ちのプレッシャーで、自分の踊りが出せなくなってしまうんでしょ?」ってなる。今たくさんの人たちがストリートダンスで開拓しようとしている"ショウビズ界"からすると、なめるなっていう世界になる。長い経験を持ったダンサーのソロには、10年・20年かけてきた重みがあるから20年後も覚えていられるような瞬間があると思う。でも、2日で作ったショーは、2日で忘れる。これは、大阪も東京も世界中に言えることやけど、そんな水で薄めたような、手軽に作ったものには手軽な感動しかないから。それを「うまい人」とか、「できる人」がやってしまったらとても残念。若い子たちもマネをするしね。

極端に言うと、いい加減な気持ちでオリンピックで走ったらアカンのと同じで、その能力がある人は、その分野のアスリートなわけやから、そういう人たちが、生活がダラダラしてて、性格がイケてなくても、実際ルーティーンが嫌いとか、それでもいいけど、ショーするっていうのに絶対やっとかなあかんようなことをしないで適当にするのは、僕はショーを観にいったりすると、気分を害されるようなことが多い。歌詞間違えても、上手かったらええやんってなっても、その時点で僕の中では成立しないのよ。けど、この人たちがやってる踊りの一瞬一瞬に感動することがあるから、「あ、やっぱり10年以上培ってきたダンスだなー」と思って、やっぱりこういう人たちは大事だとも思う。だから、それをもっとうまいこと広げてあげられる人が、もっと必要やなと思うね。舞台ひとつをとっても、そこに熱意と情熱と、ドキドキしながらも、「わからへんかもしれへんけどこの作りでこう仕掛けたら必ず伝わるはずや!」っていう目的意識のはっきりしたチャレンジなら、「あ〜失敗したなぁ!もっとこうやったら良かったのに!」って膨らむし。

あと、自分が舞台の仕事してるから、余計に大阪のクラブの照明の位置関係とかが気になる。電球切れてるとことかあるからね。こっちは金払ってるんやから設備はちゃんと使わせてよって思う。音と明かりは気にしてほしい。そこの雰囲気や立体感で、狭いクラブも広く見せる方法もいっぱいあるはずやのに、手を抜いてるところを見ると、残念やなって思う。ま、いろいろな事情でお金をかけられへんのかもしれんけど、そんな中でも一生懸命やってるクラブはみんな一生懸命やってて気持ちがいい。そう思うと、やっぱり目的とか気持ちの問題やと思う。そういう意味では大阪にはもっとプロデューサーが必要なんちゃうかな。もっと、一固体としてのダンサーを見せられる場所を作れる人がね。

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今は結構忙しいと思うけど、楽しいんじゃない?

縡芭 巧

はい、忙しいですね。前まではスタジオ経営で忙しかったけど、今は創る方で忙しいんで、めちゃくちゃ楽しい。脳みそがすごく働き始めた感じ。30歳になったし、いろいろな経験もして、見て、感じて、できるようになったこともたくさんある。後輩も増えて、中には独立してる子らもいっぱいおるし。ホンマは20歳くらいの時にやっておきたかったって思うこともあるけど、20歳では無理やったと思うし、まぁ、まだまだ自分も青いクソガキなんやろな (笑) 。ホンマはもっと (シーン的に) ダンスでみんながメシ食えてる予定やったからね、オレらが30歳になった頃は。ちょっとサボってしまったかなー。

縡芭 巧

やっぱり発注された仕事で、その人とだけってなると、創るものに溝は増えるし、クリエィティブな仕事をしようとすると難しくなる。ダンス馬鹿が多いのよ、大阪は。でも、それが大阪の良い所。みんな上手やしダンス心から愛してる。その一方、簡易的なショーに出会うことも多い。ソロはめっちゃいいねん。けど、ルーティーンは必ず間違えますとか。できない約束をしてお客さんの前に出てるのはルール違反。ここからは極端な話になるけど、「ノーギャラやから」とか「ギャラ安いし」っていうのを理由に「ルーティーンをあまり練習してきませんでした」って言ってしまって、周りも「でもソロが良かったからチャラ!」ってなっちゃうのはとても残念な光景。「じゃぁ、いくらだったらルーティーンは覚えてもらえるの?」ってなっちゃいますよね。姑的なイヤミな言い方すると「あなたはソロはうまいけど、合わせをした時の気持ちのプレッシャーで、自分の踊りが出せなくなってしまうんでしょ?」ってなる。今たくさんの人たちがストリートダンスで開拓しようとしている"ショウビズ界"からすると、なめるなっていう世界になる。長い経験を持ったダンサーのソロには、10年・20年かけてきた重みがあるから20年後も覚えていられるような瞬間があると思う。でも、2日で作ったショーは、2日で忘れる。これは、大阪も東京も世界中に言えることやけど、そんな水で薄めたような、手軽に作ったものには手軽な感動しかないから。それを「うまい人」とか、「できる人」がやってしまったらとても残念。若い子たちもマネをするしね。

極端に言うと、いい加減な気持ちでオリンピックで走ったらアカンのと同じで、その能力がある人は、その分野のアスリートなわけやから、そういう人たちが、生活がダラダラしてて、性格がイケてなくても、実際ルーティーンが嫌いとか、それでもいいけど、ショーするっていうのに絶対やっとかなあかんようなことをしないで適当にするのは、僕はショーを観にいったりすると、気分を害されるようなことが多い。歌詞間違えても、上手かったらええやんってなっても、その時点で僕の中では成立しないのよ。けど、この人たちがやってる踊りの一瞬一瞬に感動することがあるから、「あ、やっぱり10年以上培ってきたダンスだなー」と思って、やっぱりこういう人たちは大事だとも思う。だから、それをもっとうまいこと広げてあげられる人が、もっと必要やなと思うね。舞台ひとつをとっても、そこに熱意と情熱と、ドキドキしながらも、「わからへんかもしれへんけどこの作りでこう仕掛けたら必ず伝わるはずや!」っていう目的意識のはっきりしたチャレンジなら、「あ〜失敗したなぁ!もっとこうやったら良かったのに!」って膨らむし。

あと、自分が舞台の仕事してるから、余計に大阪のクラブの照明の位置関係とかが気になる。電球切れてるとことかあるからね。こっちは金払ってるんやから設備はちゃんと使わせてよって思う。音と明かりは気にしてほしい。そこの雰囲気や立体感で、狭いクラブも広く見せる方法もいっぱいあるはずやのに、手を抜いてるところを見ると、残念やなって思う。ま、いろいろな事情でお金をかけられへんのかもしれんけど、そんな中でも一生懸命やってるクラブはみんな一生懸命やってて気持ちがいい。そう思うと、やっぱり目的とか気持ちの問題やと思う。そういう意味では大阪にはもっとプロデューサーが必要なんちゃうかな。もっと、一固体としてのダンサーを見せられる場所を作れる人がね。

TDM

前に会った時も「全然ダメだよ」とか言ってたから、いつもそう思うんじゃない?


縡芭 巧

…かもしれへんけど (笑) 。

interview & photoby AKIKO
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