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映画『琉球バトルロワイアル』公開記念
丞威 〜 ダンスは心のよりどころ。 〜
映画『琉球バトルロワイアル』公開記念 丞威 〜 ダンスは心のよりどころ。 〜
ダンサーが映画の主役を張る時代が来たのだなと純粋に驚きと喜びを覚えた。ストリートダンスをルーツに持ち、現在役者として活動している丞威氏が映画『琉球バトルロワイアル』の主役としてスクリーンデビュー。今回の作品で見せてくれたダンスと演技に対するスタンスや、これまでのダンス人生、そして、展望を語ってもらった。

本作品では、ダンスシーンはもちろん、アクロバットや空手での激しいアクションもふんだんに盛り込まれており、怪我が絶えなかったのでは?と思いきや、ほとんど苦労しなかったと言う丞威氏。若干19歳にして、強い意思を持つ彼が、これからどんな役者になっていくのか楽しみである。彼の魅力を、ぜひ映画館でもご堪能あれ。

●丞威

1994 年生まれ、アメリカ・ロサンゼルス出身。 幼少時を LA で過ごし、7歳で EDGE パフォーミングアパフォーミングアツ主催ダンスコテト全米決勝ソロ 1位「パフォーマーオブザイヤ」受賞。2010 年より日本で俳優として活動を始める。2012年、映画『TOURNAMENT』(西冬彦監督)で特異稀な身体能力を披露、映画主演デビュー。その後も『闇金ウシジマくん』(12/山口雅俊監督)、『アルクニ物語』(12/山本政志監督)、『胸が痛い』 (12/深作健太監督)、TXドラマ「クローバ」(入江悠監督)に出演。公開待機作に『クローズEXPLODE』(14/豊田利晃監督)がある。

両親からの影響。“ダンスは遊び!”

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ダンスをはじめたきっかけは?

丞威

丞威親の影響ですかね。両親がダンサーでアメリカでダンススタジオを経営していて、その中で、自然と周りにダンサーがいる環境で、子供の頃からEDGEやMillenniumやDebbieに通ってました。

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お父様はトニー・ティー(Tony Tee)氏ということで、書籍なども出版されているので、存じております。

丞威

そうなんですね。両親は日本人で、YOSHIBOWさんや坂見誠二さんたちと同期で、ずっとディスコで踊っていました。父はファンキージャムというチームのリーダーをしており、東のファンキージャムと西のBE-BOP CREWと言われていたそうです。

父親はもっと深くダンスを知りたいと思い、“だったらやっぱりアメリカでしょう!”と、ロサンゼルスにたどり着きました。リュックひとつで異国の地に行って、夢を叶えて、スタジオを開いて・・・で俺が産まれました。

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ご兄弟は?

丞威

姉がいます。姉も振付師です。家族みんなダンサーです。

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なるほど。最初にハマったジャンルは何ですか?

丞威

最初に習ったのは覚えてませんが、ハマったのはロッキンですね。

母親が小さい頃から僕をプロデュースしてくれていたのですが、母から全部のジャンルをと言われました。バレエ、タップ、コンテンポラリー、ロッキン、ポッピン、ハウス・・・で、今はアニメーションに落ち着きました。

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ダンサーにとって恵まれた環境というか、特殊だと思うのですが、ご両親から教わったことや、そうしたもので自分の中で大事にしてることはありますか?

丞威

両親からは直接ダンスを習ったことはなくて、ずっと家で父がふざけて踊ってるのを見ていました。コピー機に合わせてロボットダンスしたり(笑)、そういう遊びを見てたので、“ダンスは遊びだ!”ってずっと思ってました。

最近、ダンスを仕事にするなら、バックダンサーじゃないとやっていけないと考える友達が僕の周りに多くて・・・。ダンスを仕事にすることはすごく難しいんだろうなと思ってるので、自分はしたくないと思ったんです。

なぜなら。そういう父を見てきたし、母も遊び心を持って自分をプロデュースしてきた人で、やっぱりダンスは遊びじゃないとダメなんだなと。そうじゃないと、うまくならないんじゃないかなとも思いました。

アメリカのダンサーたちは、それがどこか頭の片隅にあって、ダンスを仕事にしながらも楽しんでるんでしょうね。だから、レベルが違うのかなと思います。自分の親を見ていると、ダンスは楽しくないとダメなんだなって、いつも思いますね。

「日本人だけどお前、すげぇじゃん!」


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物心ついた時からダンスの環境があって、今は19歳。自分が子供から今までの過程の中で、ダンスに対する感覚が変わったきっかけはありますか?

丞威

丞威はじめてバトルに出た時です。

それまで、ずっとダンスをやってきて、自分で楽しんで、嬉しくて好きに踊ってました。周りは昔から黒人が多かったのですが、映画「RIZE」が流行った時期で、映画に出ていたトミー・ザ・クラウン主催の1on1のダンスバトルがあったんです。それに出たんですが、他はみんな黒人ばかり。10歳の日本人が1人だけで「なんだ?あの白いの。」みたいな感じでした。

でも、俺はそんなのどうでも良くて、バトルがはじまって、最終的に決勝までいけたのですが、負けて準優勝でした。そこから、黒人の友達がめっちゃできちゃって、「日本人だけどお前、すげぇじゃん!」って。差別ですけど、認められたいい感じで仲良くなりました。「あ〜、ダンスってこういうこともできるんだな。」って思いました。

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バトルに対しては楽しむというよりも勝つために踊る意識があるのかなと思うんですが、どういう気持ちでバトルに出たんですか?

丞威

最初の方はそうですね。とりあえず、好きなように踊ろうと思ってました。でも、だんだん成長していくうちに、やっぱりバトルは最終的には体を使わないケンカなんだと。

ディスってるわけじゃないんですが、最近の日本のバトルを観てると、ジャッジに向かってダンスをしてる人が多いと思います。もちろん、ジャッジが決めるのはもちろんだけど、ショータイムではないだろうって。アメリカだと目つきでも勝負します。だから、自分はそれが楽しくなっていきました。

自分がグァーッと行けば、向こうもグァーッと来るし、その重なり合いで、バトルって楽しいなと思うようにもなって、バトルに出たからこそ、今のアグレッシブなダンスに変わったきっかけになったと思います。

芝居を勉強したことで、どっちもうまくなっている。


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一番影響を受けたダンサーはいますか?

丞威

ライル・ベニーガ(Lyle Beniga)ですかね。振付が今まで観てきたものと全然違って、細かくかつパワフルで、僕はすごく好きです。

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今はどんなライフスタイルですか?

丞威

今は、日本に引っ越して4年くらいになりまして、仕事としてはずっと役者をメインでやっています。

先ほども言ったように、ダンスは遊びでやっていきたい想いから役者をはじめたいと思いました。ダンスは武器として持っておくというか、ストレスが溜まったら、1人で踊ってダンスに逃げる感じです(笑)。

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アクロバットや空手などもやられていますよね?昔からですか?

丞威

はい、そうですね。小さい時から、母にも勧められたので。抵抗はなく、日本の文化や礼儀を学びつつ、楽しくやっていました。

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役者になったのはいつ頃ですか?

丞威

アメリカの通信制の高校に入った時ですね。小さい頃から映画も観ていて好きだったんで、全然抵抗はなかったです。

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ダンスの表現と違うところはありますか?

丞威

そんなに変わらないです。どっちも表現としては同じ。

ダンスは芝居の中でも動きで見せる時に、役に立つんですよね。芝居でも、勉強しているうちに、心から出てくるようなものになると、ダンスのためになっていって、ダンスも心から踊れば、人を心から感動させることができるので、どちらもいいものになっているというか、芝居を勉強したことで、どっちもうまくなっている気がします。

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最近、演技を取り入れるダンサーも増えていて、芝居で手足が動いてしまうと言っていましたが、そんな苦労はありましたか?

丞威

最初は舞台が多かったので、あまり気にされませんでした。だんだん映像の芝居を勉強していくうちに、“芝居を芝居って感じた時点で芝居じゃないんじゃないか”ってことに気がついて、じゃ、どうすればいいのかと考えました。

自分で、台本を見て、セリフに対して最小限の動きと気持ちにして、棒読みに近い読み方をして、それで、だんだんダンサーの癖はなくなっていきました。

もともとアメリカにずっと住んでたので、手を動かしながらしゃべるのが普通なんです。でも、日本人にはそれはないから、日本人の役の時は無くさないといけないから、それも難しかったし、発音も難しかったし、すごく練習しましたね。

自分が言いそうなセリフだなと思いました(笑)。


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今回の作品の中で何か難しかったところは?

丞威

丞威・・・ほとんどないです。今回の役のバックグラウンドが、自分自身とすごく似てるんです。ダンサーで、世界中を旅してる。あと、沢村拳って、純粋でバカなんでしょうね(笑)。好きなものは好きで、突き詰めちゃう点がすごく自分と似ていて、ここは変に芝居するより、ナチュラルにいった方がいいのかなと思いました。

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ダンスや芝居で表現してきた中で、壁にぶつかったりしたエピソードはあります?

丞威

演じる役と自分が似てなければ似てないほど、ストレスが溜まります。やっててすごく楽しいんですよ。でも、家に帰った瞬間、精神的に疲れるというか、心が筋肉痛になるみたいな。違う人になりすぎて、無になるんですよね。特に、クランクアップした日、そのキャラクターを演じた最後の日はストレスがものすごくきます。

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なるほど。では、今回『琉球バトルロワイアル』撮影期間中にはそのストレスはなく?

丞威

はい、ほとんどなかったです。気持ち良く終われました。そのまま、スーッと・・・自分そのまんまだったからですね(笑)。役に入る時もリラックスして入れましたし。だから、ものすごく自分にとって貴重な作品だと思います。

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撮影期間はどれくらいだったんですか?

丞威

2週間くらいですかね。でも、スタッフさんも共演者のみなさんも、意気投合して、スムーズに進められました。

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シーン的にはアクションとか危ないシーンもありましたが、それもスムーズに?

丞威

撮影前に練習していて、相手の八木明人さんと子安慎悟さんという方は、プロの方なんで、受け方もわかったし、すぐに覚えられました。そこはほとんど時間もかからなかったですね。セリフも自分が言いそうなセリフだなと思いました(笑)。

ダンスのおかげでこうやっていろんなことができる。


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日本のダンスイベントにはあまり出ていらっしゃらないですよね?

丞威

そうですね。出ようと思わないんです。なぜですかね(笑)。でも、踊ってますよ。踊れる場所があればどこでも。

ただ、鏡があると踊れないんです。気持ち悪いんです。1人で自由に踊ってる方が楽しいです。たまにs**t kingzのnoppoさんとかoguriさんのレッスンに遊びに行ったりするくらいですかね。

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s**t kingzとはどこで知り合いに?

丞威

実は、14歳くらいの時ダンスを辞めてた時期がありまして。それまで、バトルにバンバン出ていて、高校入る前に、「あー、なんかダンスもうイイかな。」って悟っちゃって。1年くらいダンスしてなくて、その間は空手をやってました。

でも、ダンスの映像はずっと見てたんですよ。それで、ショーン・エバリスト  (Shaun Evaristo) を好きになって、ショーンとs**t kingzはたまに一緒に踊ってるんで、「この日本人誰だ?」「日本人でもここまでいけるんだ。」「俺もあのスタイルをやってみよう!」と思いました。

それまで、オールドスクールとか、アニメーションとかクランプはやってたんですが、あのスタイルはやっていなかったんです。それで、ショーンのレッスンをバンバン受けはじめました。

だから、s**t kingzはダンスの恩人というか、いわば、ダンスに戻るきっかけですね。俺の今のスタイルは、今までやってきたアニメーションの中に、ショーンやs**t kingzとか、最近のロサンゼルスのスタイルがミックスされています。

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では、今後の展望は?

丞威

最終的には、生まれ育ったロサンゼルスに戻って、ハリウッドで成功したいですね。ハリウッドで役者をやりながら、ロサンゼルスの友達とスタジオに遊びに行ったりして、踊るのが一番の夢です。

自分が言いそうなセリフだなと思いました(笑)。


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では、今、日本にいるのは、役者の勉強のため?

丞威

そうですね。土台が日本人なんで、そこをまず固めてからやろうと思って。

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なるほど。では、最後にトウキョウダンスマガジン読者にメッセージをお願いします。

丞威

丞威落ち着いて考えれば、そこまで僕はダンスに一生懸命取り組んでいる人ではないので、そこまでダンスのことは言えないんですが、ダンスのおかげでこうやっていろんなことができるし、ダンスで覚えた身体能力のおかげで、空手も強くなれたし、芝居にも影響したし、ダンスが拠点になっています。

この映画でも、めげずに目標に向かっていくのが描かれていますが、その熱い気持ちはすごく大事なので、一番のメッセージです。

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今日はありがとうございました!
interview & photo by AKIKO
'13/10/28 UPDATE
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Y映画『琉球バトルロワイアル』

映画『琉球バトルロワイアル』

10/26(土)沖縄先行公開
11/2(土)シネマート六本木他全国ロードショー

配給:東映ビデオ、アマゾンラテルナ
© 2013 東映ビデオ・アマゾンラテルナ

踊りがうまけりゃ、空手も最強!
沖縄にやってきた天才ダンサーが琉球空手に出会った!
ダンス×琉球空手ハイブリッドアクションエンタテインメント


“この少年は必ずブレイクする!”(ブラッチャーヤー・ピンゲーオ/監督『マッハ!』)
“素晴らしい潜在能力、大きな可能性を秘めている”(チャウ・シンチー/俳優・監督『少林サッカー』)

世界中に4,000万もの競技人口がいると言われている空手。実は沖縄がその発祥の地であることは意外と知られていない。沖縄固有の拳法「手(てぃ)」から発展し、大正時代に沖縄から本土へ、そして海外へと広く普及していった。「踊りのうまい男は、空手も強い」、「琉球最強の美人空手家を巡る“嫁取りバトル”」など、琉球空手に伝えられる伝説や史実を基に作られた、沖縄初&発のダンス×空手ハイブリットアクションエンタテイメント、それが『琉球バトルロワイアル』である。 主演は、アメリカ出身の天才ダンスパフォーマー、丞威(ジョーイ)。空手、アクロバットにも精通し、本作でも驚異的な身体能力を披露。今後が期待される俳優である。共演には、琉球空手の達人・八木明人、元K?1ファイター・子安慎悟ら、本物の空手家や格闘家が集結。圧巻の“拳”と“蹴り”を余すところなく披露する。また、「海賊戦隊ゴーカイジャー」のゴーカイピンク役で人気急上昇の小池唯がヒロインを演じ、小悪魔的な魅力で強者たちを翻弄している。 監督は、「琉神マブヤー」「ハルサーエイカー」など沖縄発の大ヒットTVシリーズを手がけた岸本司。コミカルな演出を交えながら琉球空手とダンスの魅力を描き、これまでになかった沖縄発のアクションエンターテインメントを作り上げた。

■ストーリー
究極のダンスを求め世界を放浪するダンサー、拳(丞威)。沖縄で琉球舞踊の達人に出会い、その老人から舞踊の手ほどきを受けることになるが、その舞いには、琉球空手の技が隠されていた。そして、美少女が館長をつとめる琉球空手道場の“バトル”に参加させられることになり…

監督:岸本 司 「琉神マブヤー」「ハルサーエイカー」
脚本:榎本憲男 音楽:安川午朗
出演:丞威、小池 唯、八木明人、子安慎悟、新垣正弘
協賛:守礼堂、正道会館/助成:(一財)沖縄観光コンベンションビューロー/撮影支援:沖縄フィルムオフィス(JFC)/協力:沖縄県、オリオンビール
製作・配給:東映ビデオ、アマゾンラテルナ
2013年/日本/78分/カラー/ビスタ/5.1chサラウンド



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