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DAZZLE×谷 聰志 〜 コレが僕らの生きる道。 〜  
DAZZLE×谷 聰志 〜 コレが僕らの生きる道。 〜
比類ない世界観と独創性に富んだ作品を生み出し続けるダンスカンパニー・DAZZLE。2008年2月、第2回となる公演『モウイイヨ』を発表、そのメッセージは同年10月にDVDとなって世に発信された。今回、そのDVDの監督を務めた映像ディレクター・谷聰志氏と、前回に引き続き、DAZZLEの長谷川達也氏、飯塚浩一郎氏を招いての対談を公開。今年2月に控えた第三回公演『花ト囮』に向けての意欲と共に、社会に目を向けている彼らの生き様に注目してほしい。

谷 聰志 (Yellow Brain / Visual)

DAZZLE×谷 聰志 〜 コレが僕らの生きる道。 〜 映像制作会社「イエローブレイン」にて数々の名だたるアーティスト(Mr.Children, 浜崎あゆみ、桑田佳祐、一青窈ほか)のPVやライブ映像を手がける新進気鋭の映像ディレクター。第2回DAZZLE公演『モウイイヨ』のDVDにおける監督を務めた。次回『花ト囮』でも映像の指揮を執る。 http://www.yellow-brain.com/

評価してもらいたくて表現するのではなく、 どう見せるかという目線。

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まず、谷さんとDAZZLEとの出会いから教えていただけますか?

長谷川 達也
(以下達也)


DAZZLE×谷 聰志 〜 コレが僕らの生きる道。 〜 僕が大学で所属していたダンスサークルに彼も入って来たんです。彼はダンサーというよりは主にサークルスタッフとしての関わり方でしたが、同じ時間を共に過ごしました。のちに彼は映像の世界へと進んでいくことになりますが、学生時代、彼も彼なりにダンスをかじってくれたおかげで、ダンサーの都合をわかってくれる貴重な映像監督になりました。

谷聰志
(以下谷)


はい、達也さんは大学の1個上の先輩なんです。僕はダンスよりも、どちらかというと音楽やバンドの方が興味があったんですけど、たまたまダンスをやりたがっていた友達と大学のダンスサークルを見にいったのがきっかけで達也さんたちと話すようになり、家も近所だったので、遊ぶようになりました。

サークルではスタッフ7割、ダンサー3割くらいで関わっていました。公演になると照明を担当して、ダンサーとして出たことはありません (笑) 。クラブで踊ったりはしていましたけどね。

DAZZLEがダンスディライトに向けて練習しているときは、僕は付きっ切りでビデオを回していました。自分の遊び仲間がDAZZLEだったので、練習されるといなくなっちゃうから (笑) 。撮りながら、場当たりのダメ出しをしていました。

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谷さんは普段、アーティストのミュージックビデオ(以下MV) などを手がけるディレクターとしてご活躍ですが、DAZZLEを撮るときと普段とで、感覚の違いはありましたか?



ありましたね。普段、仕事で演出やディレクションをやるときは、自分で何もかもほとんど決めていくんですが、DAZZLEを撮るときは、まずDAZZLEが何をどう見せたいかが優先です。

例えばMVにおけるダンスに関しては、語弊があるかもしれませんが、“にぎやかし”的な部分もある。

MVでは、アーティストを見せて、バックダンサーを映して、全体の映像を撮って編集ができるんですけど、DAZZLEの作品『モウイイヨ』では、ストーリーの流れがわかるように、特に見せなきゃいけないと感じたところを、全体の流れを切らないように、つながりがあるように見せていくというのが難しかった。ほかにもそういう団体はいるかもしれませんが、もともとのストーリーやコンセプトを表現する上で振付がされているので、DAZZLEの場合は途中で抜ける部分がないんです。

本来、自分は放っておかれると、細かく映像の面白さを突き詰めていくタイプなんですけど、今回は総括の立場だったので、DAZZLEがお客さんに見せたいと思っているオーダーも聞きながら進めていきました。

ただ、彼らは昔から僕がどういうことを大事にしていきたいかを話しているときに一緒にいたし、ダンス以外の映画や音楽、いろんなものに対して、「ココが面白いね」「こういう見せ方が良いね」というクリエイティブな話をずっと共有してきているので、共通の目線を理解している相手という意味でも、普段の仕事とは違いますね。感覚としては、互いに“対面している”と言うよりは、“一回、同じ方向を向いた上で向き合っている”というか。その過程がほかの仕事との違いとして大きいですね。単純に付き合いが長い分、互いがわかりやすいので、こういうことを言おうとしてるんだな、というのは理解しやすいです。

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DAZZLEのクリエイティブはダンスシーンにおいても独特なのですが、谷さんにはどのように映りましたか?



DAZZLE×谷 聰志 〜 コレが僕らの生きる道。 〜 周りと明らか違うのはDAZZLEと出会ったときからわかりました。まったく別の方向を向いているんだなと。ディライトにしても、ほかのチームがわかりやすいダンスを踊っている中で、自分たちのやりたいことをあのステージでやるというのは、周りに評価してもらいたくて表現するのではなくて、自分たちの表現を周りにどう見せるかという目線だし、それはほかと明らかに違いましたね。

ダンスで表現するのか、映像で表現するのか。その違いでしかない。 

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作品をライブで見せる側も、それを映像として収めて商品にする側も、どちらも人を魅了するという点で目的は同じだと思うのですが、双方の立場でどういった工夫の違いが生まれると思いますか?

達也

ステージを作る感覚で言うと、ステージを見る位置も多少影響しますが、お客個人の視点は時にヨリであり、ヒキであり、フカンだったりと非常に自由奔放かつ、常に一つ。僕はまず映像を、というわけではありませんから、とにかく空間とダンスをクリエイトすることが先にあって、ステージ上に隙や無駄を作らないようにしなければいけない。

人の心とは、本当に些細なことで集中が途切れ、離れてしまうものだから、余計なところに意識を奪われないように常に気を引いておかなければならないんです。そこに様々な工夫が施されるわけですが、映像の場合はまた違ってくると思います。映像はカメラの台数だけ視点があり、それを切り替えながら作品をみせていく。いわば集中させたいところと、隠したいところをうまく切り替えることができる。そして、それぞれの素材をどう効果的に紡いでいくのか、そこに工夫が施されるわけで、具体的なことはわかりませんが、非常に多くのテクニックが必要なんだと思います。

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昨年のTOKYODANCE DELIGHTで久しぶりにDAZZLEのショウタイムを拝見しましたが、私は好きでした。毎回DAZZLEの構成美に魅了されるのですが、“心を揺さぶること”と、“この動きで勝ちにいこう!”とする観点は同じですか?

達也

DAZZLE×谷 聰志 〜 コレが僕らの生きる道。 〜 人の心の動きは、“楽しい”、“悲しい”、“怖い”など様々で、僕は作品の中にそれらを散りばめたいんです。例えば、“楽しい”と“怖い”は、まったく違う感情だけど、心が動く振れ幅という点では同じものだと思っています。もちろん人によって好みはそれぞれですが、どういった音で、空間で、動きで、人は心を揺さぶられるのか…そして僕自身が感じるのか。それは日々考えていることですね。

そして勝ちに行こうという観点も基本的には同じなのですが、いくら心を揺さぶっても、悲しみや、恐怖という表現が、今のストリートダンスシーンで勝ちにつながることはおそらくないでしょう。だから、勝つためには、純粋な動きや構成など、テクニックによる興奮の振幅を広げなければならない。…とわかっているつもりが、実際はうまくはいかないわけです。人の心をどうにかするなんて、思ったようにできたなら、とっくに支配者です(笑)。

具体的な動きでいうと、 “ココは激しくいきましょう”、“ココはゆっくり動きましょう”など、動きにもいろいろありますね。ゆっくり動くからといってつまらない、というわけではない。ゆっくりだから目が離せない、早く動くから心が躍る、など面白さもそれぞれ。それらをいかに流れ良く組み合わせて、バランスよく、そして裏切れるかということを意識します。

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なるほど。DAZZLEの創り方はこういった感じなのですが、谷さんの表現の創り方はどうですか?



手法が違うだけで、表現したいというところにおいては同じだと思います。ダンスで表現するのか、映像で表現するのか、その違いでしかない。そういう意味ではまったく別々のことをやってる気はしないですね。

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映像をつくる上で大事にしてることはありますか?



僕は、モノによって意図的に変えています。MVの場合、ミュージシャンの歌詞を中心にするのか、音の感じにするのか、それとも、その人のキャラクターにするのか…できるだけ攻め方を変えるようにはしています。

ただ、気をつけていることは、僕一人で伝えようとしないこと。僕一人が僕のやりたいことを伝えても、しょうがないので、やっぱりアーティスト、DAZZLEならDAZZLEの伝えたいこととどう自分がミックスしていくのかということが大事だと思います。まぁ、自分のやりたいことは仕事以外の場でやればいいと思うので。

僕のダンサーとして、振付師としての個性。 



僕はMV以外にもライブも撮るんですが、DAZZLEの場合は、MVよりもライブ映像に近いかなと思います。ただ、ミュージシャンのライブ映像よりはMV寄りというか・・・。なんだろう、不思議なバランスですね。もともと舞台の上で成立しているものなので、それをまた、映像として残していくときに、どうしようというのは考えますね。

振付によって、この振りはこう見せたほうが面白いなというのはあるんですが、究極のことを言うとDAZZLEのビデオってステージいっぱいの固定カメラの映像で見せても、成立はするんです。でも、そうしないのはなぜかと言うと、それだけでは見えない面白さがあるから。

今回の撮影時、1本目はわりと横や斜めから遊びながら撮って、2本目はあえて正面から撮ったんです。その差はあったんだけど、どっちも面白い気がした。正面から撮れば構成も見やすくて、わかりやすい。または、お客さんの普段見えないアングルを見せていく面白さを考えると、ステージの袖や上から見下ろした画も面白いから。

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あの構成の繊細さというか、ゼロから創っていく作業は本当に感心します。

達也

DAZZLE×谷 聰志 〜 コレが僕らの生きる道。 〜 好きなんでしょうね、そういう作業が (笑) 。頭の中が数学みたいなことになるので、毎回毎回すごく苦しいんですけど、そこを突き詰めてやっていくことが、僕のダンサーとして、振付師としての個性でもあるなという気もするんです。“じゃ、適当に。”ってなかなかできない。それも計算してないと気が済まないんですね。今回のDABDABWORLD WIDEでも見せた傘の作品、あの作品も非常に構成が緻密なんですけど、「そこまでやる人はいないでしょう」って思われるものを、「じゃあ、やりましょう。」とやってのけたいというか。

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あのネタの振り入れは想像できないです (笑) 。一人ひとり「あなたはココからココまでこういう経緯をこうやって踏んでください」って指示するんですか?

達也

基本的にはあらかじめどういう動きでどうなるかは最初に僕の中で創ってしまいます。ただ、それが必ずしもイメージ通りにいかないときに、実際に動きながら決めて行く作業になる。ただし、振りを考えるのはいつも最後で、そこにたどり着くまではひたすら傘を使って何ができるかを考え、アイデアを出します。こんな使い方があるから、これをやりながらどうこの構成を通っていくか…というシーンをつなげていくんですけど、もう僕のノートはひどいですよ (笑) 。傘の絵でぐっちゃぐちゃ。傘でどういう画を作れるのか、どういう順番で見せていくのが気持ちいいのかを考えながら流れを創っていきます。・・・面倒くさい(笑) 。2月の公演『花ト囮』も多くのステージングアイデアが詰め込まれていて、きっと「こんなことを舞台でやるのか!?」といった驚きがあると思いますので、ぜひ観ていただきたいです。まぁ、コレが僕の生きる道なので (笑) 。

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ダンスは、市場や環境を踏まえて計算して創る作業に加えて、生で湧き上がるエネルギーが大きく関係していて、そこまで綿密に創り込んできたのなら、あとはプラスアルファのハプニングというか、奇跡に近いものにしたいという想いが現実に引き起こすかどうかというか、DAZZLEはそこまでのものとして常に持ってきてくれるので嬉しいんです。

浩一郎が加入したのはものすごく大きかった。

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DAZZLEを学生時代のサークルからやって、メジャーでの踊りを経て、操られる側のダンスも経験して、数多くのステージをこなしてきて、苦しいことも味わってきた・・・今は作品を残すという作業で、DVDにしたり、さらには面倒くさい構成を考えたりしている。でも、そこも今までのすべてがあったから一面になっていると思うんですが、これまでの時間の過ごし方を振り返ってみてどうですか?

達也

基本的にはDAZZLE結成当初からやってることは変わらないです。自分が観たいなと思うものを創り続けているだけ。仕事などで思うように表現できないことももちろんあるんですけど、23、24歳くらいのときからDAZZLEとして生きていくことを決めたので。

これまでも、これからも、自分が仕事として踊っていくことと、表現したい部分のバランスを取っていかなければいけない。そんな中で、どうにかDAZZLEという団体で生活ができるようになりたいといつも願っています。そしてそのための一つの目標として、僕らの作品を映像として残したたかったわけです。ちゃんとプロモーションできるように、そして、多くの人の目に振れる可能性を広げるために。でも、全然実現できなかった。映像どころか、自主公演ができるまでに10年かかりましたし。こんなに時間がかかったのは、単純に僕らの行動力が足りなかったからだとは思います。気持ちは常にあったのに、やり方が分からなかった。



彼らは学生時代から、自分たちの舞台をやりたいと言っていました。僕はDAZZLEではなかったので、“もっと告知して、やればいいじゃん”と外から客観的に好き勝手に言ったりしてましたね。外にはDAZZLEの活動状況がそこまで具体的に広まっていなかったと思います。ただ、浩一郎が加入したのはものすごく大きかった。外から見ていて足りなかった部分が全部彼によって補われました。引きこもりだった人を社会に引っ張り出したというか (笑) 。

達也

そうそう (笑) 。社会の中で自分たちの位置がどこにあってどうすべきかを提示してれた。作品を考えることしかできない僕に、それを誰にどうやって見せたらいいかを具体化してくれた。僕の頭の中にあったものを形にするきっかけをくれたのが彼です。

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具体的にどういうことをやったの?

飯塚 浩一郎
(以下浩一郎)


DAZZLE×谷 聰志 〜 コレが僕らの生きる道。 〜 とりあえず、“やる”っていうことですね。普通かもしれませんが、それが一番大事だと思うんです。目標に向かって具体的に歩き始めるのが一番難しいことなので。

僕は、広告クリエーターとしてクリエイティブを作っていて、意志は形にして見る人に何かをぶつけないと、この世に存在すらしていないと同然だと、痛いほど感じています。だから、自分のやりたいことを勇気を持って、世に問わなきゃいけない。それが出来て初めて、肯定なり否定なりという反応が生まれるわけで。

広告を通して、ビジネスの仕組みやメッセージがどういう風に形作られ、受け入れられていくのか、そのプロセスを勉強しました。その時期に、たまたま達也さんからDAZZLEの公演をやるので、ダンサーとして出ないかと誘われ、関わり始めました。

そのとき思ったのが・・・これは今自分もメンバーになっているので言いにくいんですけれども、DAZZLEは日本のダンス界において人間国宝的な存在だと思ったんです。無形文化財というか(笑) 。こういう集団は世界中に探してもないんですよ。オリジナルのダンスを10年以上同じメンバーで作り上げ磨き上げ、体系化している。DAZZLEが無くなったら、この世からこの表現は無くなっちゃうんです。

僕はストリートダンスをやっていたので、他のダンスをもちろんリスペクトしてるんですが、DAZZLEはELETE FORCEとかELECTRIC BOOGALOOSなどオリジネーターに匹敵する存在のはずだと思うんです。それをちゃんと証明したい。自分たちのやり方を貫き続けて、何の保証も頼るものもなく10年間もやってる・・・そういうすごい人たちを何とか形にしないといけない!という使命感に駆られました。

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具体的にどうすればダンスを世の中にわかりやすく伝えられると思いますか?

達也

これは前のインタビューでも言ったかもしれませんが、僕がダンスシーンで作品を創って踊るときに思うのは、ダンサーとして生きていくために、いかに多くの人にダンスの価値を認めてもらうか、そういった環境を創ることが必要だと思います。だから、ダンサーがダンサーに向けてテクニックを誇示することも、ずっと僕も目指していたし、それもとっても大事なことですけど、ダンスを用いていかに面白い表現ができるかにも取り組んでいかないと、いくらテクニックがあっても伝わらない。ダンサーがテクニックを磨くのは当然のことなので、ダンスって面白いものなんだ!と一人ひとりが伝えることを意識できるといいなと思います。

“だれに対してどんなことをメッセージしたいか”を踊りに乗せる。

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個人的な意見ですが、私は、“大きなことやろう!”というより、“素敵なことをやろう!”という感覚のほうが強くて、たとえば武道館でやるよりは、どこかのお寺や美術館といった、作品性のほうに走る傾向がありまして。DAZZLEの存在は、そういう場をイメージしやすくさせてもらえるというか、そういう存在として居てくれて有難うと思わせてくれる存在なんです。



うん、確かに。ダンスをやっている子たちがどういうシーンで生きていくのかを考えたときに、ダンスが納まるところって少ないんですよね。だからこそ、いろいろなバランスで存在できるし、自分で楽しむこともできる。だけど、逆に言うと、それはいいことだけど、まとまりとして落ち着くところがないということ。じゃあ、仕事としてミュージシャンのバックダンスをすることがダンサーの評価としていいかどうかを決めるのは難しい。

ひとつ、シーンとして、“ここにはダンサーがいる”、“ココにはダンスを売りにしているアーティストがいる”っていう場が明確にあると、世の中からも注目されると思う。わかりやすくいえばテレビ番組でダンサーが見れるとか、ダンサーのホームページや、動画を見たりすると、ひとつの盛り上がりができる。でも、すべてそこでしかない。もっとダンサーがアートとして存在している場所があるといいのかなと思います。

ただ、これはダンサーとしての場合で、DAZZLEの場合・・・そもそも僕の中ではDAZZLEを“ダンサー”として括るのも変な話なんです。まぁ、ダンサーなんだけど (笑) 。それは僕がさっき言った、ダンスを表現方法のひとつとして捉えているからなんだけど。やっぱり、DAZZLE は“アーティスト”として在ろうとしてるからこそDAZZLEだなと思う部分は大きいです。ほかの人も、そういう部分を目指していくときに、目指すだけで終わっちゃうのはもったいない。さっきのたとえじゃないけど、自分たちの世界に引きこもったままなのはもったいないと思う。だからこそ、一歩外に向けた場所ができるといい気がします。

素人目ですが、学生時代、DAZZLEがディライトに出るのを見に行ったとき、ダンサーがアーティストして踊っている姿は面白かった。でも、悪い言い方をすると、クラブカルチャーのままのダンスだと、オマケみたいなところに落ち着いちゃう気がしてもったいないと思う。MVでのバックダンサーも同じ。MVじゃなくて、ダンサーとしてのPVをつくろうよ!っていうことになっていってもいいと思う。

浩一郎

DAZZLE×谷 聰志 〜 コレが僕らの生きる道。 〜 僕も、DAZZLEを世の中の人が見て面白いと思うにはどうしたらいいかを毎日考えているんですけど、その一因として、何のために踊ってるのかが明確じゃない人が結構多いのかなと思います。

ストリートダンサーで、周りからカッコいいとか上手いということで認められたいという人は、それはそれでいいと思うんですけど、結局そこから音楽とか映画とか、だれもが楽しめるものになるためには、“だれに対して自分がどんなことをメッセージしたいか”が踊りに乗ってないと、難しいと思います。

やっぱり、マニアックな世界だし、僕も会社で「ダンスやってるんです。」って言うと「・・・で?何が面白いの?」みたいになる。そうじゃないようにするためには、ダンサーとしてどういうものをやりたいのか・・・そういう志が必要だと思います。DAZZLEの活動はそういう風にしていきたいし、そういう風にしているつもりです。DAZZLEにはみんな志があるので、それをいい形にしていけたらなと思います。

世の中で流行るもの、流行らないものがある。たとえば、フィギュアスケートも一昔前までは全然人気がなかったのに、真央ちゃんが出てきただけで、すごい視聴率を取るようになった。あとは、僕は格闘技が好きなんですけど、20年位前は、マニアックな世界でやっていたのに、K-1ができて総合格闘技ができて、世の中の普通の人が見るようになりました。そこには、彼らの見てもらう努力が働いていて、ただ「勝つ」試合をするのではなく、世の中の人に戦いで何かを伝えたいという人の想いがあったからこそ、あんなに大きくなっていったわけで。

もっと自分の身近な人や外に向けての、「ダンスが面白い!」とか「こういうことを伝えたい!」という気持ちと、具体的な努力が必要だと思います。この具体的な努力というのが一番大事だとは思うんですけど、それは僕の中だと、DVDにすることだったり、公演でストーリーをつけてダンスを見せることで、ダンスを知らない人にも理解してもらうことだったり。昨年はバンドの人とイベントをやったりもしたんですけど、そういう挑戦を今後もいっぱいしていけたらなと思います。

今回で、一度完成されたものになると思います。

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では、次回の公演の見所を教えていただけますか?

達也

今回の作品のテーマは「狐の嫁入り」。見てはいけないと伝えられている狐の嫁入りを目撃してしまった少年が、悲しく残酷な運命へと導かれていく。 今回も、映画的な作品に仕上がります。物語にあわせて、装置を駆使した構成とダンス。映像によるテキストの表示は小説を読むような感覚に近く、ステージ上で繰り広げられる動き、音、色と重なり合って、独特の世界を構築します。

毎回DAZZLEの公演にはちょっとした舞台装置が登場するんですが、今回はステージ上に迷路が形作られます。それが舞台上でどう展開するかが見所ですね。きっと見ていただく方も迷い込んでしまうんだけど、それぞれに出口を見つけてもらえたら、と思います。

浩一郎

DAZZLEの作品はよく異次元空間の話だったり空間だったりするんですが、今回は「今を生きている自分」としての世の中への問題意識がストーリーにかなり入ってきます。ちょっと踏み込んだ感覚ですが、人はわかり合えるのか、合えないのか・・・それに対するDAZZLEなりのメッセージが入る話になっています。

そこには、いかにダンスをわかってもらうかというDAZZLEという運動体の本質的なテーマも重なっていたりします。

今回は、それぞれが今まで突き詰めてきたダンスにプラス、3回目ということと、去年と同じ会場ということもあり、勢いとか流れもよくなって、今回で一度完成されたものになるんじゃないかなと。そこから今後、違うものになるか、またはさらに突き詰めるかもしれないんですけど・・・やりたいこととやれることの現時点でのバランスがとれた、綺麗な円のような作品ができそうな気がします。

達也

DAZZLE×谷 聰志 〜 コレが僕らの生きる道。 〜 DAZZLEが提示する、ダンスの新しい可能性は今回の作品の中にも感じて頂けると思います。それを人が観て、面白いと思うかどうかはわからないけれど、構えてみなくても、それぞれの思う面白いところが散りばめられてると思います。構成が面白いとか、音楽とか、ストーリーとか、ダンスとか…それぞれの楽しみ方ができると思います。

TDM

皆さんが今までにない自信と使命感に突き動かされている今回の公演、楽しみにしています。今日はありがとうございました
'09/02/02 UPDATE
interview & photo by AKIKO
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