TDM - トウキョウダンスマガジン

Tatsuaki & Tom 〜 ダンサーという人間のDVD 〜  
Tatsuaki & Tom 〜 ダンサーという人間のDVD 〜
2009年2月18日にDVD『DABDAB - TOKYO STREET DANCE -』がリリースされる。“DABDAB”=“TDM”完全公式プロデュースによるメッセージの詰まった自信作が完成。今回撮影を手がけたTatsuaki氏、Tom氏との対談では本作への素直な想いと“一番ダンサーをかっこよく撮った”という言葉を聞くことができた。ダンサーの生き様がわかる一枚、是非是非、ご覧いただきたい。

Tatsuaki

Tatsuaki & Tom 〜 ダンサーという人間のDVD 〜 1977年、神奈川県生まれ。東京工芸大学映像学科在学時より、都内クラブにてVJを開始。DABDABにおいてフライヤーデザイナー、VJとして、その才能を発揮。VJ活動を通してHIP HOPミュージシャンたちとの親交を深める。

2005年、当時のDABDABを収めたDVD『トウキョウストリートダンス』を制作。本作はHMV渋谷店のチャートNO.1を獲得した。同年、映像制作会社「modea t.k.」に参加。HIP HOPのMVのディレクションを開始。同時期よりSPACE SHOWER TVのHIP HOP番組『BLACK FILE』のディレクションも手掛ける。MVの代表作はRHYMESTER『HEAT ISLAND』、PUSHIM『HEY BOY』など。ブラックカルチャーを愛する、映像クリエイターとしての感性の詰まったMVは映像アワードなども受賞。クラブカルチャーとは直接の距離を置いたものの、フライヤーデザインなどにおいてDABDABクルーとしての参加を続け、今回のDVD制作依頼を快諾してくれた。
http://www.modeatk.co.jp/


Tom

Tatsuaki & Tom 〜 ダンサーという人間のDVD 〜映像制作会社「modea t.k.」所属。普段は邦楽MVの制作進行役として活躍。学生時代にブレイカーとして活動していたことから、今回、DVD『DABDAB』総指揮官として撮影の舵を取る。

ダンサーを撮れて嬉しかった。

TDM

今回の撮影にはいろいろな流れがありすぎたけど、率直に振り返ってみてどうだった?

Tom

楽しかったですよ。他の業務もやらなくちゃいけなかったんですが、「もー!DABDABの撮影のこと考えたいのによ〜!」とストレスがたまるくらいやる気はあったので、DABDABに関しては全部楽しかったです。

僕は、ダンサーを撮れるっていうのがすごく嬉しくて。時間的に、1日で何組も撮る案もあったけど、やっぱり一組ずつ撮ろうとなったときに、正直14組は厳しいかなと思ったんです。けど、妥協しなかったんですよね。14組もいればいろんな人たちがいるし、楽しかったですね。まぁ・・・ほんとにいろんな人たちがいましたけど (笑) 。全部印象的です。

TDM

映像クリエイターとして楽しめた部分は?

Tom

Tatsuaki & Tom 〜 ダンサーという人間のDVD 〜僕はDABDAB当日のライブ撮影が楽しかったですね。僕が撮りたいと思った場所にカメラを置かせてもらいました。基本はダンサーの人に見てもらってもOKなものにしたかったので、なるべく全体が見えるように撮りました。あとは、1回じゃ見られないカメラアングル。これなら絶対面白い、自分が観たい!と思える映像にしたいと思って、それができたので、すごく楽しかったです。

イメージ映像のほうは、本人たちに任せた部分もありましたが、僕の中では“ドキュメント”を意識しました。いろいろ演出をして創り上げたものもありますけど、できるだけドキュメントで撮ったほうが、本人たちは嬉しいんじゃないかなって。こちらの価値観で持っていくのもアリだとは思うんですけど、今回に関しては本人たちにいろいろ考えてもらったので。

完全に僕はすごくいいDVDになったと思います。っていうのは、他にないから。撮る前にいくつかツタヤで借りて見てみたんですけど、ないっすね。新しい。全員のストーリーがあって、いい構成だと思います。

要は、ダンスが良かった。

TDM

Tatsuakiは4年前作った『トウキョウストリートダンス』も手がけてくれたけど、今回のDABDAB DVD、どうだった?

Tatsuaki

Tatsuaki & Tom 〜 ダンサーという人間のDVD 〜素材とかめちゃめちゃだったじゃないですか (笑) 。でも、いい意味でダンサーを立てたというか。撮影側の型にはめてまとめたら、こっちはこういうやり方があるっていう意見が出せるし、その方がしっかり撮れるから、まとまっちゃうんですよ。でも、このDVDはいい意味でめちゃめちゃ (笑) 。佐藤主導のところもあれば、ダンサーに任せている、ある意味無法地帯な部分もあって、結局まとまって見えた。なんか、それがすごく良くて、結果オーライ (笑) 。あれはラッキーだった!

でも、何が良かったって、ライブが良かったです。あれは超ドラマチック。あれで、全体がしまった。要は、ダンスが良かった。

TDM

オフショットとライブの羅列で、前のシーンとのギャップに笑えるところが何か所かあって面白かったんだけど、それは編集されて生まれた面白さになってるんだよね。

Tatsuaki

うん、構成良かったですよ。バッラバラなのに、まとまって見えた。

TDM

DVDと少し離れますが、映像を撮る側として、ダンサーが生かされる方法や機会について、どう思う?私はダンサーを何でもかんでも使ってほしいっていう感覚はなくて、映像にとってすごくプラスになったと思われるような使われ方をされたいと思ってるんだけど。

Tatsuaki

俺にとっては昔からダンサーってすごく近い存在。いっぱい良い人を観てるし、知ってるから、いざっていうときに使いたいな〜と思いつつ、結果、今PVを4年やってるけど、実際その機会はなくて。

なんだろう・・・俺はPVだとダンサーを使えないんですよ。たぶん、こっちの押し付けをしたくないから。何でもいいっていう発想は俺にはないし、ダンサーもアーティストで、ちゃんと創ることを知っている、それを俺がわかっているから手軽には使えないんだと思う。

でも、他の監督とか映像の人たちって、ダンスをぜんぜん知らないから、コレっぽいので〜って使うんだと思います。扱いがあまり良い感じじゃないんですよね。ダンスってあんなにジャンル分かれてるし、それに対してスペシャリストがいるのに、「アレでいい」っていう発想は俺はないから、使えないで今に至るんですけど (笑) 。

俺の中では、こっちの押し付けでは扱えない素材というか。「このビデオにダンスがはまるから、一緒に創っていこうよ」っていう発想で、一緒にやっていくならありえると思う。ダンサーと「こういうのどう思う?」ってやり取りを、俺だったら、したい。そういう関係性で一緒に創っていけるならやってもいいと思う。だから、まだダンサーを使えないんです。使いたいなって想いはあるけれど、邪険にはしたくないんですよね。

映像を撮る人間ってダンスを知らないから、音にはめて踊ってんのに、スローモーションで使ったりとか。それって辛いですよね。

やっぱりダンスはインディーなんですよ。映像しかやってない人間がダンスと接する機会がない。昼夜関係なく働いてたらクラブなんて行けないし、目も肥えない人が圧倒的に多い。ダンスミュージックに対してもぼんやりしか知らないと思うから、だから、俺はそういうのが嫌で監督をやってるんですけどね。俺はちゃんと音楽を知った上でやっているし、そういう表現のためのダンスで見せれるんだったら、やりたいですね。でも、しかるべきタイミングがいいんです。

TDM

なるほどね。でも、ダンサーにとっては嬉しい感覚だし、そういう影響力を持てるダンスシーンにもなっていきたいね。

Tatsuaki

そうなれるダンサーはいると思うし、そうなってほしいですね。そのきっかけがビデオだったらいいですよね。その窓口として、このDVDはダンスをぜんぜん知らない人が見ても、まぁまぁ楽しめると思うんですよ。むちゃくちゃな中でもいい感じに撮れてて、中にはそうでもないのもあるけど、このDVDにはこうやって撮って大正解!っていうめちゃめちゃいい瞬間がある。

特に駒沢の(=Shingo & Yoshiyuki) は超イイ。あれは同じ目線の人じゃないと撮れないと思う。「あ〜(ダンスを) 知ってる」って感じがするし。あとは、公園のやつ(=久保群青 + 佐藤剛+阪東邦明)。俺はあの二つが好きッス。で、オープニングのPINOくんはドラマチックすぎて、あれは過剰 (笑) 。でも、あれも好き。

Tom

駒沢のは編集もスッと行きましたね。余計な手を加えなくて良かったというか、「あれ?これでいいじゃん。」って早かった。

TDM

Yoshiyukiが「俺たちのインタビュー、内容ないっすね!でもそれが俺たちらしくていいっすね!」って言ってた (笑) 。自然体な映像で素敵だよね。

ダンサーは自由人。 

TDM

客観的に観てみて、ダンサーのイメージはどう見えた?

Tatsuaki

Tatsuaki & Tom 〜 ダンサーという人間のDVD 〜あのDVDを見る限りでは、ダンサーは自由人 (笑) 。すごく己を持っちゃってるから、羨ましいなとも思います。その反面、自分も昔、超自由人だったからこそ、そうはなりたくないとも思う (笑) 。

今クラブ生活をやめて、それでいろいろわかったこともある。今は自分の追及というよりは社会で勝負できる俺の能力を試してみたくて。もちろん自分のクリエイティブは絶対に残しますけど、みんなが喜ぶものの中に自分の個性を入れていくことのほうが楽しいんです。

もし、その自分のクリエイティブ全開でいくなら、PVなんか撮ってる仕事してちゃダメだと思うんです。お金をもらわずに自分でやるべき。人の曲をもらってビデオを作ってちゃだめなんです。全部セルフプロデュースならいいんですけど、人の金もらうし、人の曲だし、人のクリエイティブがある中の俺は一部。でも、必要とされてるし、発揮できるから、ココでがんばる。そういう映像の作り方で今はがんばってるから、このDVDを見て、自分全開のダンサーたちが羨ましく見えた。羨ましくは見えたけど・・・。自分がまともになったんでしょうね。みんなのことを考えるようになって、みんなハッピーなのがいいと思い始めた。

そういう意味で、みんなハッピーなDVDができたと思いますよ。演者に対しても。あとは、このDVDができて、AKKOさんが一番ハッピーなればいいんじゃないかと思いますけど (笑) 。

TDM

その今と昔で変わった感覚ってすごく良くわかる。昔、人から「よく“ダンサーなんで。”って言葉をお使いになられますが、ダンサーって何が特別なんですか?」って言われたことがあって。私の中では“ダンサーなんで、特別です”なんて感情で言ってるつもりはさらさらなかったけど、己が強くてそう感じ取られちゃったみたいで、それを指摘された。言葉になっていなくても、そういう態度になっているのかもしれない。それがいわゆる、自分が優先的にあって、相手が良く思ってくれたらOKみたいな感じなんだろうね。

わかりやすく言うと、社会により必要とされる為には、相手の立場やメリットを考慮して、「私はダンサーなんですけど、何か一緒にできますか?力になれることはありますか?」っていうセッションが必要なんだけど、それがダンサーは作りにくいのかもしれない。よく思われてから、それが仕事につながる現状が続く、イコール、結局、与えられる仕事しかできない。一緒に創り上げたいと思ってもらえることが大切なんだよね。

Tatsuaki

難しいっすね。。。結局ダンサーはどこに出て行くんだろう?

TDM

基本的にはショウで勝負できるところだと思う。シルク・ドゥ・ソレイユとか劇団四季とか、エンターテイメントっていう面でもストリートダンスが生かされる場がまったくない。だから、それを作りたいんだけどね。まだ、ダンスに対して最低限お金を払って見に行くっていうおもてなしができてない。「見に来てよかった!」って思わせるものができるはず。

Tatsuaki

それは次のDVDっすね。そういうの見てみたい。そんなドキュメンタリー、超オリジナルじゃないですか。たが、逆に何でもできる、可能性が限りないと思いました。

TDM

ステージは、世界遺産とかね (笑) 。妄想はもう膨らんでる。

Tatsuaki

そうなると、映像が携われる。力になれる。

TDM

Tatsuaki & Tom 〜 ダンサーという人間のDVD 〜前作の「トウキョウストリートダンス」は制作として頼まれて作って、今回も同じ感じで作ろうかなと思ったら、できなくなって、自分でやらなくちゃいけなくなった。その過程があったからこそが自然と強くなってそれが形にまとまって、どれも妥協せずにがむしゃらに無邪気に走りきったって感じ。

まだなんとなくの感触しか聞けてないけど、周りから聞こえてくる声とか、涙流してくれたなんて話を聞いたらやった甲斐があったなと思う。

出演者は“自分が出てるからこれ買って”って言えるけど、“自分も出てるけど他のダンサーもヤバイから買って”って言ってもらえるくらい、ダンサー全員の生き様が、要はどれだけ人に伝わるかなんだよね。買っといたほうがいい、イコール、持っといたほうがいい。コピーじゃ嫌だ!って一枚になるために、どれだけ気持ちが届くか。それもこれも、ああいう過程になったから創れたのかなぁって思う。

絶対一番ダンサーをかっこよく撮ったDVD

TDM

では最後に、DVDを買っていただきたい読者にメッセージをお願いします。

Tom

ダンサーに対してただかっこつけてるだけだと思ってる人もいるかもしれないんですけど、ただ、かっこいいだけじゃない、人間のビデオです。僕の価値観ではありますが、僕が見たいと思うものを撮らせてもらいました。

Tatsuaki

Tatsuaki & Tom 〜 ダンサーという人間のDVD 〜そもそも俺たちのコンセプトは、CDショップに置かれてる、あらゆるダンスDVDよりも一番かっこいいDVDを!というのが大前提だったから、それは絶対クリアしてるのは間違いない。それは実証したと思う。俺らの中のクオリティバランスというか、既存のレクチャーなりいっぱいあると思うんですけど、その中でも絶対一番ダンサーをかっこよく撮ったDVDだから、絶対見る価値あるんじゃないですか。それは保証するんで。ライブのショーもちゃんと撮れたと思いますし、そりゃもっとやれと言われれば、やれる部分はもちろんあるんですけど、あれがこのDVDとしてはベストだと思います。

あとは純粋に面白いっすよ。変な映像だもん。構成も変だし、全部変なことが上手くまとまってることが面白いんですよ。ダンサーのDVDといいつつ、ちょっとドキュメンタリーだし、演出も入ってるし、謎だけど、ダンサーってこんな感じなんだってわかるし、でも、踊ると締めるじゃないですか。でも、馬鹿なこともやるっていうのが、もちろんダンサーに向けていった方がいいのかもしれないけど、ダンスを知らない人が観ても楽しめると思う。クラブが好きな人とかは好きだと思うし、映画館とかでやってもいいかもしれないし・・・


TDM

じゃ、目標が達成できたんだね。

Tom

俺たちの中では達成してます。もし次をやるなら、俺たちがまたその上を行くから、もっとかっこよく撮れると思いますけどね (笑) 。ダンサーを撮るなら俺たちが絶対かっこよく撮れます。そう思ってますよ、ほんとに。

TDM

このDVDでダンサーの気持ちを汲んでくれてるのがありがたい。本当に今回はありがとうございました!あとはこの良さを伝えます!
'09/02/16 UPDATE
interview & photo by AKIKO & imu
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